Chapter 36-3
天界王「そなたは私が選んだ時よりずっと強くなった。それもそなた自身の努力と、仲間たちとの固い絆の賜物であると、私はそう信じたい」
アルム「はい、でもぼくはまだ…」
天界王「努力し足りない、とな?謙遜せずとも、そなたが人を超える鍛錬を積んでいることは分かっておる。私は常にそなたを見守っている、そなたの努力は十分なものだと確信しておる」

天界王から太鼓判をもらって、さすがにアルムもこれ以上否定できなかったようで、「あ…ありがとうございます」とやや小さな声で返した。

天界王「私は知っておる、そなただけが特別に扱いを受けるのを嫌うことを。しかし、私にも責任がある。それを消すことは叶わぬが、果たさんとすることはできる。そなただけに授けたいものがあった故、そなたに1人で来てもらったということだ」

渡したいものがある、と天界王は言う。一体何なんだろう、と思う間もなく、天界王は言葉を続ける。

天界王「かの勇者、キース=クランドが伝説の聖剣…ロトの剣を振るう姿を間近で見たことと思うが?」
アルム「はい…何て言ったらいいんだろう…すごかったです。剣がキースさんの言葉を聞いてたみたいで…」
天界王「真に名剣、宝剣と呼ばれし剣は持ち主を選ぶ。ロトの剣も、キースにとっては唯一無二の絶対の剣だが、その他の者にとってはただの金属塊に成り下がる。剣が持つ者を拒み、持ち上げることさえ許さないのだ」

あの剣に、そんな秘密が…?
初めて耳にしたロトの剣の性質に、アルムは目を丸くした。人によって軽々と振り回せたり、持ち上がりさえしないなんて、不思議な話だったからだ。

アルム「あの…それはぼくが呼ばれたのとどういう関係が…?」
天界王「おお、忘れるところであった。そなたは私が選んだ精霊の使者だ。その名に相応しい武器を、精霊ルビスの名の下に、我ら天界人が持てる力を結集して作り上げた1本の剣を、そなたに託そうと考えたのだ」
アルム「…えっ?」

アルムは思わず声を漏らした。天界王の言うには、自分に剣を与える、と。

アルム「そんな…ぼくはこの剣があれば」
天界王「そなたが今持つそれは精霊の剣。その剣もまた生まれは同じなのだ。遠慮はいらぬ」

天界王は目を閉じ、何かを唱え始めた。すると、アルムの目の前に光の球体が現れた。その光が消えた時、そこには1本の剣があった。
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