Chapter 34-14
一同「「「!!!」」」
突然の出来事に、皆は息をのんだ。一番近くにいるレイシアが、その声を出すまでに数秒を要した。
レイシア「…ロエン!!」
ロエン「ぐっ…がっ…」
吐き出す血は止まらず、ロエンの顔と服、そして地面を真っ赤に染めていく。
レイシア「ロエン!何があったの!?しっかりして!」
その一瞬で、彼女はこれまでにないほど狼狽していた。彼にあった傷は全て、ノイルのベホマで癒えているはずだ。ということは―――。
レイシア「…まさか、そんな…!!」
ロエン「…そう…だ…ごほっ!!僕は…もう…だめだ…」
レイシア「ロエン…あなた、最初からこうなるって分かってたの…!?」
ロエン「姉さん…が…、僕に…何も…しない…で…逃がす…わけが…ない…がはっ!」
また、ロエンの口から鮮血が飛び散る。近くにいる者にも血が降りかかったが、そんなことを気に留める者など1人もなかった。
レイシア「…だめよ…何言ってるの…あなたは、私と戦わなきゃいけないのよ…!勝ったまま死ぬなんて…そんなこと…許さないんだから…っ…!」
レイシアの目から零れた涙が、赤く染まった地面に吸い込まれる。
ロエン「…みん…な、お願い…だ…。さっき…言ったこと…」
焦点の合わなくなった虚ろな目で、ロエンはレイシアを見た。そして、もう力すら残っていない右手で、レイシアの手を握り、呟いた。
ロエン「…ご…めん…やっぱ…り僕…」
レイシア「嫌…嫌よ、そんなの!ねぇ…しっかりしてよ…っ!!」
レイシアも、ロエンの手を強く握り締める。瞬間、ロエンが微かに笑ったように見えた。
ロエン「……が…、レイ………シ…ア…」
最後の言葉は、もはやレイシア以外には聞き取れなかった。ロエンの瞼がゆっくりと落ち、そして…右手から力が完全に消えた。
レイシア「…いや…そんな…あ…あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
レイシアの叫びが、辺りに響き渡った。力と熱を失ったロエンの右手を握りながら、レイシアはただひたすらに泣き叫んだ。
涙は…止まらなかった。
〜続く〜