Chapter 34-13
全ての話を終えると、ロエンはやや疲れたようにふう、と息をついた。その目に浮かんでいる涙が、裏切りに対する後悔をはっきりと表していた。
アンナ「…あたいたちの知らない裏で、そんなことを…!?」
ロエン「君を襲ったのも僕だ…なんて言えばいいか分からない」
アンナ「そんなことは、過ぎたことじゃないか。あたいも無事だったし、あんたがそれを悔いてるんで十分だよ」
アンナの優しい言葉に、ロエンはただ「ありがとう」と呟いた。そのしばらく後、1人の人物がロエンのすぐ傍まで寄って、座り込んだ。
ロエン「…レイシア?」
レイシア「信じられない。さっきの話を聞いてても、ピンと来ないわ。まさか、私たちのすぐそばでそんなことをやって見せてた、なんて」
ロエン「………」
レイシア「でも、辻褄が合いすぎてるのが悔しいわ。それに、一番あなたと近いつもりだった私がその裏を見抜けなかったことも…」
ロエン「…レイシア、その…ごめん。君は僕のライバルだったけど…僕は君のライバルにはなれないよ。僕には…そう見てもらう資格なんかない」
レイシア「なーに言ってるのよ。私があなたのライバルなら、あなただって私のライバルよ。資格も何もあったもんじゃないわ。そうじゃない?」
レイシアは笑顔でそう言った。周りのみんなも、それに同じて頷いている。
ロエン「…ありがとう、レイシア。君みたいな人とライバルになれて、本当に良かったよ」
レイシア「…何か釈然としないわね。さっきから聞いてたら、まるでお別れの挨拶みたいじゃない。あなたはこれまでもこれからも、私たちの大切な仲間なのよ。それに…これから何度も戦うの。私の、ライバルなんでしょう?」
ロエン「………」
レイシア「…ちょっとどうしたのよ、急に黙り込んで…」
レイシアは突然無言になったロエンに、少々の不安を感じた。十数秒の間を空けて、ロエンは震える声で言った。
ロエン「…そうだったら、良かったのに」
レイシア「…ロエン?」
ロエン「僕も…平和な世界で君たちと一緒に笑ってたかったのに…っ」
そう言った途端、異変は起こった。仰向けの状態で転がっていたロエンの口から―――
ロエン「…がは…っ!!」
―――真っ赤な血が、彼の服に飛び散ったのだ。