Chapter 34-11
もう一度、ロエンは目だけを動かして周りを見た。そうして、「今なら言える」とでも思ったのか、ロエンはゆっくりと口を開いた。
◇◇◇
あの年の春―――僕は、ルプガナ教習所の生徒になった。
周りのみんなは、「強くなりたい」っていう純粋な思いを持っていた。僕だけが、1人違った理由を隠していた。
簡単に言えば、スパイ。
教習所やその周りで起きたことを、アルファ姉さんに伝える密告者。僕はそのために、教習所に送り込まれた。
僕は教習所での出来事を、手紙で姉さんに伝えていた。もちろん、姉さんからの返事も受け取っていた。「そろそろ森のモンスターを巨大化させる」とかの情報もやり取りしていた。
姉さんからは色々な課題が出された。「教習所の生徒と仲良くしろ」やら「強くなれ」やら。離れた時に、なるべくみんなが混乱するために。僕は全部やり遂げようとした。強くなったかどうかは、レイシアと戦えば分かると思った。最初の日にレイシアと見合って、「僕の目指す壁だ」と感じた。だから、僕は何度もレイシアに手合わせを申し込んだ。レイシアがそれを断らない性格だってことを、僕は利用していた。
ある日、僕は実習について先生たちが話し合っているのをこっそり聞いた。ベラヌール経由でペルポイに行くって聞いた僕は、今しかないと思った。今が行方不明になる、絶好のチャンスだ。知らせると姉さんもそう思ったらしく、「船をひっくり返すからその時にはぐれるといい」って言われた。
それで…僕は、船が転覆した時、1人だけみんなと違う方に泳いでいった。それから何週間かは、いろんな洞窟の中で姉さんからの返事を待った。その間に、アルムたちに見つかった時はどうなるかと思った。僕はとっさに思いついた出任せの嘘で、どうにかごまかすことができた。
姉さんたちと合流して、僕は自分の弱さを知った。それからガンマたちに戦いのアドバイスをしてもらったりして、一生懸命強くなろうとした。
本当は、この頃に聞いておくべきだったんだ。姉さんたちが何を目的に、動き回っているのかってことを。だけど…僕にはそれができなかった。姉さんの言う通りにしていれば、間違いはない…そう思っていた。