Chapter 34-10
倒れていたのが天使ではないことを認識するのに、アルムたちは数秒を費やした。が、次の瞬間、皆の声は1つとなる。
そこに倒れていたのは、皆の大切な、13人目の仲間だったのだ。
一同「「「ロエン!!!」」」
それがロエンであると分かった途端、彼らは倒れているロエンの周りに群がり、屈み込んだ。すると、閉じられていたロエンの目が、ゆっくりと開かれた。
その両眼は、一番最初にアルムの顔を捉えた。
ロエン「…アルム…?」
アルム「そうだよ、みんなもいる!だからしっかりして!」
ロエン「…今なら、僕に止めを刺せるぞ」
ふ、と自嘲的にほんの少し口元を上げるロエン。聞いたアルムは、何を言ってるんだ、と頭を振った。
アルム「どうしてぼくがきみに止めを刺さなきゃいけないんだ…!」
ロエン「そんなことは…アルムが一番よく知ってる。でも…そんなことする必要もないか…」
今にも消え入りそうな声で、ロエンはそう呟く。息苦しさが今にも伝わってきそうな声だったが、ひとまずその言葉を聞いて、アルムたちは安堵した。
アルム「とにかく…ひどい怪我だ。ノイル、ベホマできたよね?」
ノイル「うっ、うん、まかせて!」
ノイルはすっと人混みから出てくると、ロエンに向けてベホマを唱えた。全身にあったロエンの傷が、瞬く間に癒えていった。
ロエン「………と…。ほん…に、……な……く…って」
アルム「…何?」
ロエン「…なんでもないよ」
自身にしか聞こえない声。ほとんど唇のかすかな動きだけだった。
ロエンの傷が塞がったところで、アルムがまた口を開いた。
アルム「ここで何があったか…教えてほしいんだけど」
アルムは翼竜が天界を襲いにかかった理由も、何よりロエンがここで倒れている理由も、彼は全て知っていると直感したからだ。すると、ロエンから意外な答えが返ってきた。
ロエン「…そうか、僕は…そうだったのか…。今分かったよ…」
アルム「…ロエン?」
ロエン「…いいよ、話してあげるよ。僕が知ってること…全部」
その眼には、何を思っているのだろう、いくつもの思いが混ざり合った複雑な色が宿っていた。それを見破った者は果たして何人だっただろうか―――アルムたちは、小さくこくりと頷いた。