Chapter 34-9
セイファー「やっぱりだ!」
城へと向かう途中、セイファーがふと気づいたように言った。
レイシア「…どうしたのよ?」
セイファー「前にあった門がなくなってる…やっぱり天上軍の仕業だったんだ」
言われて、アルムとリズ、そしてエドは気づいた。以前来た時は、門のおかげでアレクとエドが残らざるを得なかったのだ。
アルム「これって…天上軍が解散したってこと…?」
セリス「そりゃあ、敵さんの目的は世界の破壊だろ。ラダトームを潰すために天上軍を作っても、奪還されたんじゃ軍に意味がなくなるからじゃねーか?」
ルーナ「うわぁ…セリスが真面目なこと言ってるー」
セリス「うるせー、俺だっていつもバカやってるわけじゃねーんだよ!」
6歳も年下のルーナの言葉に、大人気なく食ってかかるセリス。横でレイシアが、「それでこそセリスだわ」と呟いたのを聞いたアルムは苦笑した。
ともあれ、門がないのは悪いことではない。むしろ好都合だ。
アルム「とにかく、進もうよ。今どうなってるのか早く天界王に聞かなきゃ」
レイズ「…だね、急ごう」
一斉に走る15人の足が、不思議な音を立てる。何と言えばいいのか、砂を蹴るときの音でなければ、固い石畳を蹴る音でもなかった。
が、その音が唐突に止まった。先頭を走っていたアルムが、不意にその足を止めたからだ。
ユリス「…アルム、どうかしたの?」
アリュード「何かあった?」
後ろの方にいて前が止まった理由が分からない者は、口々に「どうした」と声をかけた。すると、先頭やそれに近い場所にいる者たちが、後ろに伝えた。
アルム「…まだ倒れてる天使がいた」
アンナ「まだいたのかい…?」
レイシア「ええ、ここからでもあの建物まで引き返すのは…」
ノイル「とりあえず、倒れてる天使の近くまで行ったら?」
セリス「そうだな、ここからじゃはっきりと分かんねーし…」
再び先頭が動き出す。この時、彼らはそこに倒れている天使をどうするかを考えていた。あの建物まで運ぶには遠い。かといって倒れている者を連れて戦いに向かうこともできない。考えがまとまらないまま、彼らはぞろぞろと歩いていった。
しかし、彼らは間違えていた。そこに倒れていたのは、翼竜に襲われた天使ではなかったのである。