Chapter 34-8
目についた限り全ての天使を運び終える。気を失っているのはレノンだけでなく大勢いたが、まだ意識のある者も少ないがいた。セイファーが駆け寄ったターナという天使も、その中の1人だった。

ターナ「…分からないの。急に街が騒がしくなって…様子を見に出ていったら、いきなり爆発に巻き込まれて…」
セイファー「…それって、詳しくはいつ頃の話かな?」
ターナ「わたしが巻き込まれたのは、まだ明け方前じゃないかしら…とにかく、暗かったわ」

自分たちが山の祠で寝ている間に、こんな騒ぎがあったとは。拳をぎゅっと握り、セイファーは悔しさを滲ませた。

キース「取り込み中悪いが、奴を追っかけてぶっ倒す方が多分早いぜ。どうする?」

後ろから、キースの声が響いた。アルファを追う方が早いのなら、迷う余地はない。

セイファー「…もちろん、行きます。ターナ、みんなをお願い」
ターナ「分かったわ。セイファーたちも、気をつけてね」

心配そうに羽を垂れるターナに、セイファーは力強い表情で頷いた。

◇◇◇

タア「…しかし、改めて見るとひでぇな」
アンナ「だね…正直、想像とあまりに違ったんで面食らっちまったよ」
ユリス「わたしは、向こうにアルファがいなくて、こっちに来てるって分かった時から何となくこんな気はしてたけれど…」

建物を出て、もう一度街の惨状を目に焼き付ける。無残にも破壊された街並み、血だまりができた雲の地面…その中で、変わらず街を照らしている太陽の光が、どこか残酷に感じられた。

レイシア「…どっちにせよ、このまま黙って立ち止まってるわけにはいかなくなったわね」
アルム「そうだね。それにぼくたちの敵はアルファだけじゃないしね…」
セリス「…あのザルグって奴と…あと…」

セリスが口に出さずとも、言うことは分かっていた。

リズ「…私たちは、戦わなきゃならない」
エド「うん、迷ってちゃダメだよな!」
ノイル「そうだよね…戦わなくちゃ!」

しかし、彼らは迷わない。これが皆が、そして、「彼」が決めた道なのだろう。

ルージャ「ボクは…ロエンの気持ちも聞きたいな…」
アリュード「そうだね…真意を聞かないことには、どうにもならない…」
レイズ「でも、話ぐらいならできるかも。いや、しなくちゃ!」

強い決意。自分たちは、ロエンについてどれほど知っていた?彼の心の内までは分からない。分からないのならば、本人から聞き出すしかないのだ。

ルーナ「だいじょーぶ!あたしたちならできるよきっと!」
セイファー「うん、自信を持って頑張らないとね!」
キース「さあ、ルプガナのこともある。問題はヤマ積みだ。1個1個なんてやってられるか、まとめてぶっ壊しにかかるとしようぜ!」

目と目で合図。
「行こう」「よし」、こんな会話が無言でなされた。そうして、誰からともなく歩き出し、やがて走り出した。天界王の住まう、大きな城を目指して。
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