Chapter 34-6
一口に天界といっても、その入り口で敵が待っていてくれるはずもなく。
セイファー「…とりあえず、天界王さまにお話を聞いた方が…」
キース「だな。よし、ひとまずそこに行くとしようぜ」
天界と地上の狭間、ちょうど天界への入り口に位置する場所に彼らはいた。キメラの翼が役に立ったことは、今更言わずもがな。下山することなく、彼らはここにたどり着いた。
そうして、天界が舞台になるわけなので、それを統べる天界王に話を聞けば、何か手掛かりが得られるかも知れない、とセイファーが考え、先の台詞に戻るわけである。
レイズ「だけど…何か嫌な予感がするんだよね…」
レイズは不安を拭いきれない、といった表情でいる。
そんなことは杞憂だ、と言わんばかりに、皆は口を開いた。
アリュード「とにかく行ってみないと分からないよ!」
ノイル「そうだよ、今から心配しちゃダメだって!」
セリス「そうだぜ。俺たちは絶対に勝って帰るんだからな?」
不安を微塵も感じさせない仲間たちの言葉に、レイズも「うん、そうだね」と笑って返した。が、その少し後にまた表情が曇ったのを、セイファーは見逃さなかった。
セイファー「………」
…もしかしたら、セイファーだけでなく他にも気づいた者があったかもしれない。実際、道中の戦闘でもレイズはどこか上の空で、集中力に欠けていたのだ。
セイファー「…レイズ、大丈夫?」
レイズ「あっ、うん…ごめん」
セイファー「ボクも感じてる…多分良くないことが起こってるよ。でも、だからボクらがしっかりしなきゃ!ね?」
レイズ「…そうだね。ありがとう、セイファー」
セイファーがそう諭すと、ようやくレイズの顔から不安の色が消えた。その後の戦闘でも、レイズはいつも通りの動きに戻った。
だが…この時2人の天使が抱えていた不安は、物の見事に的中してしまっていたのである。
◇◇◇
アルム「………!」
天界の中心部にたどり着いたアルムたちは、その凄惨な光景に目を疑った。その中でも特に、アルムやセイファー、レイズといった、以前に天界を見たことがある者たちは尚更だった。
以前に見た、足下に広がる雲海の白と頭上に広がる空の青のコントラストは、今やどこにも見当たらない。空こそ変わらず青かったが、足下に目を向けると、真っ赤な鮮血が辺りに飛び散り、何人もの天使がそこかしこに倒れていたのだ。
レイシア「ひどい…誰がこんなことを…」
アンナ「あの女に決まってるじゃないか!まったく…虫酸が走るよ…!」
この光景を見て顔を覆う者もいれば、怒りを露わにする者もいた。その中で、セイファーは一番近くに倒れていた1人の天使に近寄った。