Chapter 34-5
夜。
夕方前から降り出した雪は、その勢いを止めることを知らず、吹き荒れる風も手伝ってほぼ真横から窓を叩きつけていた。
時折大粒の雪が窓を叩き、小気味よい音を残して窓に張り付く。外気があまりに低いため、すぐに溶けないのである。
「これは明日は大変だ」と神官はこぼしていた。なんでも、窓に分厚く張り付いた雪をかき崩す作業をしなければならないらしい。
それはさておき。
全員が眠りについた部屋で、1人だけ起きている者がいた。それはアルムではなく、レイシアだった。
レイシア「………」
どうしたことか、目が冴えて眠れない。それだけでなく、ふとした時に、何かとてつもない不安に押しつぶされそうになるのだ。
レイシア「…何考えてるんだか」
自嘲気味にそう呟くと、レイシアは1つ寝返りを打った。こちらを向いてすやすや眠っているルーナの顔だ。
レイシア(結局…アルファは1人だったってことなのね…)
ぼんやりと、そんなことを考える。
レイシア「(孤独…仲間がいない…)そんなやつに、負けてなるもんですか」
自分に言い聞かせるようにそう呟くと、レイシアはもう一度寝返りを打って目を閉じた。
◇◇◇
キース「みんな、おはよう。昨日はよく寝れたか?」
エド「しっかり寝れた!」
ルーナ「うん、あたしも!」
朝、最初の問いに元気よく答えた2人に、キースは苦笑した。
キース「…まあ、お前らは大体予想つくけどな。さてと…あともう少ししたら、出発しようと思う」
リズ「…晴れて良かったわね」
ユリス「ね…」
顔を見合わせて、2人は笑う。
一晩休んだおかげで、皆元気だった。不思議なことに、どれだけ疲れていても一晩休めば回復していた。今更といったところだが。
キース「…で、セイファーとレイズに言っときたいことがある。ちょっと2人、来てくれ」
手招きされるままに、キースの元へ向かう2人。しばらく話が続いていたようだったが、やがてセイファーもレイズも浮かない顔をして戻ってきた。
キース「…よし、じゃあ出発しようぜ。みんな、準備はいいな?」
タア「さっさと行って、さっさと帰るぞ」
大剣を担いで、タアはそう言った。初めはキースのリーダーシップを受け入れなかったが、今ではキースの強さを一番理解しているのは彼かもしれない。
キース「…よっしゃ、行くぜ!」
一同「「「おぉーっ!!!」」」
部屋の中に、15人の声が響き渡った。