Chapter 33-21
アルム「…やった…!」
セリス「マジで勝ったぜ…!」
ルージャ「良かった…!」
途端に皆、安堵感に包まれ、その場にぺたんと座り込む。セイファーとレイズも、さすがに疲れたのか、座り込んでいた。ただ、笑顔でハイタッチを交わしてはいたが。
その中でただ1人、誰よりひどい傷を負っているキースだけは、倒れているガンマの側まで歩いていき、そこに跪いた。すると、蚊の鳴くような小さな声で、ガンマは呟いた。
ガンマ「…オレの負けだ。やっぱり勇者の軍団には勝てないのか…」
キース「…お前は俺より遥かに強かった。俺たちは15人でこれなんだ」
ガンマ「人数は問題じゃない…最後には勝ったか負けたかが物を言う…」
キース「…もう一度聞くが、お前らグループの目的は何なんだ…?」
キースがそう問うと、ガンマからは意外な答えが返ってきた。
ガンマ「そのことについては…オレもベータも知らなかった」
キース「何だって…?」
ガンマ「オレたちはアルファの言う通りにするのが一番良いって思っていた…アイツには、未来を見る力があったから」
キース「未来を…見る力?」
ガンマ「そうだ…詳しくは本人に聞けばいい。だけど…ベータやオレが倒されたところでアイツの計画は狂いだしている。アイツは残忍な女だ…オレたちの力を、こんなことのために利用していたなんてな…死ぬ間際になって、やっと気がついた…」
ガンマはもう呼吸もままならなかった。ヒュー、ヒューと空気が漏れる音が、キースにははっきりと聞こえていた。
ガンマ「…アイツは、この世界の全てを消そうとしている…!」
キース「なんだと…!?」
ガンマ「多分…いや、絶対そうだ…ベータが倒された時点で、アイツはオレをここに置いて、囮にするつもりだったんだ…」
キース「囮…だって?」
ガンマ「ああ…そうしてアイツは世界を全て見られる場所から世界を壊しにかかるつもりだろう…今知ったから言えるが、オレはそんなことを望んじゃいない…。アイツは昔から1人だった…だから人間というより、世界全部を信じなくなったんだろう…グループの目的は分かってるだろう、アイツは世界を消すことでそれを全うしようとしている…」
ガンマの言葉は、キースにとって衝撃的だった。
キース「そんなもん…見当違いもいいとこじゃねーか…!」
ガンマ「ああ…だから、アイツを止めてやってくれ…オレにはそれができなかった」
キース「…分かった。俺たちに任せろ」
ガンマ「それから…お前たちでザルグを倒すんだ…。アイツは…今までザルグを利用してきている、もしザルグがアイツの側に戻れば…どうなるか分からない…」
キース「…そうか、分かった」
キースは繰り返し言った。意識が薄れゆくガンマに聞こえるよう、大きな声で。
ガンマ「…オレはこの世界は嫌いだ…けど、消すほどのもんでも…ないんじゃ……ない……か………」
最期の一言まで、キースはしっかり聞き取った。それと時同じくして、わずかに動いていた腕が床に落ちた。そして虚ろだった目は次第に閉じていき、再び光を見なくなった―――。
〜続く〜