Chapter 33-11
キース「ユリス、お前ひょっとして…!」
その時キースの頭の中で、槍を突き立てたユリスとある人物との姿が重なった。
確か、あいつはこんな風にしていた…。ユリスも同じことをしているとすれば…!
ルージャ「ユリス…何をしようとしてるの…!?」
エド「わかんねーけど、何かすごそうな技だな!」
彼らが言葉を発する間に、ユリスの周囲には変化が起こっていた。槍を突き立てた場所を中心に魔法陣らしき円が展開され、空気が渦を巻いたと思いきや、彼女の眼前に紫電の玉が姿を現した。
ルーナ「…あれ、すごそうな技なんかじゃない、本当にすごい技だよ!!」
キース「ユリス…お前、なんでそんな技を…?」
ユリス「…ラルドさんに教わったんです。槍を武器とする者が操る最強の技だって」
ユリスは目を開いて、ゆっくりと槍を引き抜いた。雷の玉はザルグを飲み込まんと、まっすぐ向かっていく。
ザルグ「…貴様、まだ力を秘めていたのか…!」
キース「何言ってんだ?これは俺じゃねーよ…お前が見下した、俺の仲間が撃つ必殺技だ!!」
ザルグ「…おのれ…!よくも…よくも私をぉぉ!!」
ザルグの目が見開かれる。既に地獄の雷は大きく展開していた。
ユリス「…はぁぁぁっ!!」
渾身の力で、ユリスは槍を一振りした。次の瞬間、凄まじいほどの雷がザルグに迸った。
ザルグ「ぬおおっ…うおぉぉぉっ!!!」
ただ絶叫するザルグ。その光景を見て、ユリスは薄らながら思っていた。自分がラルドに師事していたのは…究極的にはこの技を撃てるようになるためだったのだ。
世代を越えて、奥義は伝承された。
槍術最強の必殺技、ジゴスパーク―――。
光が止んだ時、ザルグは地に伏していた。一瞬、彼らは勝利を確信した。しかし、ザルグは立ち上がった。満身創痍なのは見て取れる。ザルグ自身も半ば狂ったような笑い声をあげていた。
ザルグ「…っく、っくくく…くっくっ…」
ユリス「………!」
ザルグ「驚きを隠せん…よもや貴様のようながそのような技を会得していようとは…。今日のところは退かせてもらおう。次に貴様らの顔を見るときは…一切容赦はしない…!!」
言い終わるなり、ザルグは自身の周りに黒い穴を作り出し、その中に消えた。「待て!!」と何人かが叫んだ時には、既に穴は閉じてしまっていた―――。