Chapter 33-6
精霊の祠、行く手を阻むザルグとの対峙。
先に行かせようとしたアルムたちが悉く大穴に飲み込まれ、さすがのキースも一瞬は焦った。しかし、自分が焦れば周りも焦る。その思いが勝ったのか、キースは自分でも驚くほど冷静であった。
いよいよザルグが身にまとっていたローブを脱ぎ捨て、戦いが幕を開けんとする。
キース「みんな、行くぞ!俺たちの力を見せてやろうぜ!」
一同「「「おおーっ!!」」」
キースの一声で、残ったメンバーは一斉に戦闘体制に入った。キース以外にここに残っているのは、ルーナ、エド、ルージャ、ノイル、ユリス、そしてタア。彼ら1人1人が、持てる全ての力をザルグにぶつけるつもりでいた。
ザルグ「先に言っておくが、私を3年前と同じように見ない方がいいぞ?」
キース「お前こそ、俺より周りの仲間に警戒することだな!」
ザルグ「…言わせておこう。まずは様子見といくか!」
ザルグは口を開け、凍える吹雪を吐き出した。姿かたちが人に近いだけに、その光景は異様なもので、ザルグが魔族であるという動かぬ証拠だと、何人かはふと思った。
しかし、そのような雑念を抱いている暇はない。吹雪は7人を包み込まんとしていた。しかし、そこは戦闘経験に富むキース。
キース「させるか、フバーハ!」
6人の前に立ち、防壁を張った。これにより軽減された吹雪をさらに各々が防御でしのぎ、受けたダメージは微々たるものにとどまった。
キース「よし、次はこっちの番だ!」
キースが先頭を切って、ザルグに向かっていく。
ザルグ「ふん、愚直に真ん前から攻め入って来るとはな…!」
ザルグは右手に炎を生み出し、キースに放とうとする。とその時、キースの姿がふっと消えた。
キース「…くらえ!」
気付いた時には、キースはかなり高い場所から斬り込もうとしていた。だが、ザルグはそれを読んでいた。
ザルグ「甘いわ、メラゾーマ!!」
キース「………!!」
特大の火球が、キースの全身を包み込む。慣性によって、大きな炎の塊はそのままザルグを越えてその背後に落ちた。
ザルグ「もう終わりか…ぐっ!!?」
ちらりと炎を見やり、口元を緩ませた瞬間、ザルグは呻き声を上げた。キースからわずかに遅れて、タアが攻撃を繰り出していたのである。ザルグの左肩から右脇腹に大きく深い創傷ができる。さらに、それだけではなかった。火球の中から、キースが火傷1つ負わずに現れたのだ。
キース「言ったろ?俺よりも周りの仲間を警戒しろってな!」
強気な声で、ザルグに剣先を向けながらキースは言った。