Chapter 33-5
キース「悪いな、遅くなっちまって!けど、メインの行事にはちゃんと出席させてもらうぜ!」
キースは明るい声で、アルムたち8人に笑いかけた。
アルム「ひょっとして…ここに来てくれたってことは、ザルグを倒したんですか!?」
キース「あー、悪い。止めを刺す直前に逃げられちまった」
レイズ「止めを刺す直前!?ザルグを倒しかけたってことなの!?」
ルーナ「うん、そーなんだ。あたしたちも頑張ったんだけどね…」
ルーナはエドたちと顔を見合わせて頷き合う。ユリスはリズやアンナ、レイシアたちと話し込み始めた。
*「む…しばらく時間を取るとしよう。少し話をしてくるとよい」
そう言って手近な椅子に腰を下ろす神官に礼を述べ、皆は再会を喜んだ。
◇◇◇
アルム「前にここに来た旅人って、やっぱりキースさんたちだったんですね…!」
キース「ああ…あれからもう3、4年経つのか、またえらく早いな…。ここは、俺の第2の原点とも言うべき場所だな。色々あって、バラモス城にいた俺を、ラルドたちが助けてくれたんだっけな」
アルム「そうなんですか…大変だったんですね…」
それほどでもないかもしれないのに、アルムにとってキースの話は随分大仰に聞こえた。それを知ってか知らずか、キースは苦笑してこう言った。
キース「なんにしても、今回は3年前よりきつい気がするな。前はバスラやらガルドスやらってのが、「世界滅ぼしますよー」とか言ってくれてたからあれなんだけど、今回は敵が何を狙ってんのかも分かんねーしな、ひょっとしたらもう手遅れって可能性もあるかも」
アルム「…ぼくは3年前のことはよく分からないんですけど、今回は本当にぼくたちで勝てるんですか…?」
キース「どうだろうな。俺には分かんねーよ。でも、どんなに勝てそうにない相手でも俺は戦うぜ」
鋭い眼差しに、アルムも鋭い目で頷いた。
アルム「それはぼくも一緒です。でも、ぼくたちがキースさんの邪魔になったりしないかなって」
キース「自信持てって。俺は1人で勝てるほど超人じゃない。そんな奴は超人じゃなくて変人だろ。現にザルグだって俺だけじゃなくてあいつらもよく戦ったんだぜ?」
キースは1人で笑って、離れた場所で喋っているルーナたちや、その向こうで武器の手入れをするタアたちに目をやった。
アルム「…よかったら、ザルグとの戦いがどんなだったか話してもらっていいですか…?」
キース「そうだな、気になると思ってたよ。あいつらが、すげー強くなったと思った戦いだったな…」
キースは彼らから目を離し、部屋の天井をぼんやり眺めだした。
そして時は、ザルグとの戦いが始まる直前まで遡る―――。