Chapter 33-4
そうして、アルムが夜中にとある考えに耽っていたとは露知らず、他の面々は清々しく寝覚めのよい朝を迎えた。
セリス「昨日早くから寝たおかげでぐっすり眠れたぜ!」
レイシア「そうね、いつもは起きたら欠伸ばっかりして目も擦ってるのに今日は全然そういうことしてないものね?」
部屋に集まった時、セリスが発した言葉に対するレイシアの返事に周りはどっと笑い、セリスは苦笑して頭を掻いた。アルムも同じようにそばで笑っていた。昨日は気づけば結構遅くまで起きていたが、今日の寝覚めは悪くなかった。迷いも断ち切れ、善戦できそうだとアルムは思っていた。
◇◇◇
それから小一時間後。8人は旅の扉の前で神官に見送られようとしていた。
*「いよいよ彼の絶境の地へと向かうのだな…?」
レイシア「…はい、必ず全員でここに戻ってきます」
アンナ「そうだね、誰一人欠けずに勝ってみせるさ!」
アリュード「ずっと頑張ってきたし、負けるわけにはいかないね!」
神官はなかなか堅い表情をしていたが、それとは対照的に8人の表情は明るかった。一切の緊張も見受けられない。
*「うむ。時に、そなたの思いは決まったか?」
アルムの方に顔を向けて、神官は真剣に問いを投げた。だからアルムも真剣に返した。
アルム「はい。ぼくはみんなと一緒に戦って、勝ちます!」
*「…決まったのだな、ならばよい。そなたらの健闘を祈ろう。では、扉の解呪を行うとしよう」
神官は青い渦巻きの周りに薄く見える透明の壁に手をかざして、解呪の呪を唱えようとした。ちょうどその時だった。
ドン、ドン!
やや強めに入り口の扉が叩かれる。どうやら来客のようだった。
*「…すまない。先に客人を迎え入れようと思う」
外は冷えることを知っている8人は反対できず、神官は入り口へと歩いていき、その扉を開けた。と、やや上擦った神官の声が聞こえてきた。
*「おお。そなたは!久しいな…」
彼らに聞き取れたのはここまでだった。
セリス「…どーせ久しぶりに会ったじーさんか何かだな。こりゃ長くなるな」
セリスはそうこぼしたが、それは違った。神官はすぐに客人を従え、旅の扉の部屋に戻ってきたのだ。が、彼らが驚いたのはその後ろにいた面々だった。
アルム「…キースさん、みんな!!」
アルムの表情が明るく変わる。そこに現れたのは、ザルグがいた精霊の祠で別れた、キースを含む7人だった。