Chapter 33-2
*「彼らのことはよく覚えている。険しいネクロゴンドの山道を上り、此処にたどり着いたのは3人の若い男女だった。彼らは躍起になっていた、バラモス城にいる敵を倒すと」
アルム「バラモス城って…城跡のことですか?」
聞き慣れない地名に、アルムは反応した。神官は1つ、頷いてみせた。
*「左様。彼らはこの地下より、バラモス城へと赴いた。そして、彼らが此処に戻ってきた時、2つの変化が起きていた」
アルム「…戻ってきたんですか?」
*「無論だ。旅の扉を使わねば、隔絶された盆地より出ることまかりならぬ。嫌でも此処を通る」
アルム「あっ、そうですね…」
言われれば、とアルムは苦笑して頭を掻いた。神官の話は続く。
*「変化の1つは、バラモス城が崩れ廃墟と化していたこと。もう1つは、3人から4人に増えていたということ」
神官の話が何を意味しているのか、この時アルムには理解できた。
神官は最初に言った、「似たような境遇の旅人」と。ならば、その末路も自ずと似てくるのでは、と思わずにはいられなかった。人数こそ違えども、以前の旅人に重ねて考えれば、自分たちの行動は分かる。
城跡の地下にある何かを破壊し、そしてロエンを連れ戻す。
*「そなたらが何を思い、此の地へ来たのか、そこまでは分からぬ。だが、これだけは分かる。そなたらは皆、その眼に強い意志を宿しておる。それはかつての旅人と一片の違いもない。されば、そなたらは必ずや光を掴む。己を深く信じ、絆を深く信ずれば、必ず」
神官の言葉は、アルムの心に良い意味で重くのしかかった。
改めて、自分たちにあるもの、言い換えるなら自分たちの武器。それが何かを再認識した。1年半に渡って培ってきた仲間たちとの絆。さらに、自分を何度も危機から救ってくれたかつての勇者もついている。相手にとって、一切の不足はない。
アルム「…ぼく、何だか自信がわいてきました。だから…今までずっと、自信がなかったのかもしれない…」
そうだったんだ、というように、アルムはたった今気づいた気持ちを素直に口にした。
*「ふむ…浮かんだ問いは、全て解いておくべきだ、話せるのなら話すとよい」
神官にそう促されて、アルムは小さく頷きつつ語り始めた。