Chapter 31-22
アラン「じゃあみんな、準備はいいか?」

新しくなった武器を携え、皆は力強く頷く。この1回で片が付くかどうかは分からないが、少なくともこちら側にとって意味のある結果を残さねばならない。

アルム「行きましょう!」
セリス「平和な世界を取り戻すってか?」
レイシア「もちろん…そのつもりよ…!」

アラン「よし…精霊の祠へ!」

この感覚はもう何度目になるだろうか―――。アランがキメラの翼を放り投げるや否や、身体がふわりと浮き上がった。

◇◇◇

アラン「精霊の祠に着いたらしいな。さっさと通り抜けてしまうとしよう」

アランが皆にそう言って、祠の方へ駆け出した時だった。

???「残念だが…通行料が必要だ…!」

どこからともなく、低く響く声が聞こえてきた。全員が周囲や上空を見回す。しかし、何も見当たらない。

と、突然彼らの目の前の空間が捩れ、その中から何かが現れた。それがこちらに出現すると、空間の歪みはひとりでに消え去った。そして、中から現れた者が何かを知った途端、その場には緊張が走った。

アルム「おまえは…ザルグ!!」
レイシア「何しに来たのよ!!」

ビシッとザルグの方を指差し、レイシアは叫んだ。すると、ザルグは堪えるような笑い声をあげた。

ザルグ「…くっくっく…これは愚問だな。貴様らが我らの計画を妨げるのを、黙って見ていろとでも言うのか?」
セリス「ああ、黙って見てりゃいいじゃねーかよ!」
ザルグ「そういう訳にもいかぬのが筋だ。それはそうと…全員が集結しただけでなく、新旧の勇者までもが揃い踏みとは、私も大層な接待を受けるようになったものだな…」

ユリス「新旧の…勇者…?」

ユリスは思わず繰り返した。「新」の勇者は間違いなくアルムを指しているだろう。しかし、「旧」とは何なのか、それを考える間にザルグは次の言葉を発していた。

ザルグ「今まで、よく他人を演じ続けていたものだな。感服に値する」

ザルグが向き直った方向にいたのは―――アランだ。

アラン「…へっ、本当は死ぬまでそうしていたかったんだがなぁ…!」

俯き加減で、アランは悔しげにそう吐き捨てる。しかし、その声は自信の無いそれではなく。その理由は、すぐ明らかになった。今度はザルグが真っ直ぐアランを指差し、こう言い放った。

ザルグ「…そうだろう?3年前の世界の英雄、アラン=ディーク…いや、キース=クランド!!」

一同「「「!!!」」」

驚愕と絶句の視線が、一斉にアランに向けられる。アランは何も言わずに、ただザルグを見据えて返すだけだった。


〜続く〜
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