Chapter 31-20
深い眠りの奥で、アルムは夢を見ていた。目の前に、アルム自身がいる。その自分は燃えるように赤い眼をして、煌々と光り輝く剣を手にしていた。それを天にかざすと、光が瞬く間に視界を奪った。直後、アルムは光の中に何者かの姿を見た。
◇◇◇
アルム「………」
目が覚めた時、アルムはその夢の中に出てきた剣に強く惹かれた。今アルムが手にしている精霊の剣も手に馴染んで安心感を与えてくれるが、あの剣はそれをはるかに上回り、さらに何か不思議な力を秘めているような感じを受けたのだ。
しかし、所詮はただの夢。ルーナは「すごいなー、正夢だったらいいのにね♪」と言ってくれたが、セリスやレイシアは「夢なんだから」とアルムを諭した。だからアルムもそう割り切って、見た夢を忘れようとした。
と、ちょうどその時だった。廊下から慌ただしく、乱暴な足音が聞こえてきたかと思うと、ノックもなしにタアが入ってきた。そして、アルムの姿を認めると、彼は低い声で「ちょっと来い」と言った。
セリス「…何だ?」
アルム「さあ…とりあえず行ってみるよ」
アルムは戸惑いながらも、タアに従って廊下に出た。すると、タアは声を張り上げたそうではあるが、敢えて押し殺してアルムに言った。
タア「…あいつがいねぇ」
アルム「あいつ…アランさんのこと?」
タア「それ以外誰がいるんだ。お前、何か聞いてねぇのか?」
アルム「ぼく?そういえば昨日…ううん、やっぱり言う必要はないみたいだ」
アルムは向こうからやってくる人影を見て、そちらを指差した。タアが振り向くと、そこにはアランがいた。
アラン「おーい、悪いけどみんなを庭まで呼んできてくれないかー?」
廊下の向こうから、アランの声が届くと、タアは再びアルムの方を向いて決まりの悪そうに「…悪い」と呟いた。アルムはタアが何を思っていたかが分かった気がした。
アルム「…それだけ、みんなのことを心配してくれてたんだよね」
タア「………」
アルム「ありがとう。絶対に、みんなで勝とう!」
タア「…へっ、当たり前だ!」
軽く笑って、タアは歩いていった。アルムもまた、仲間たちを呼びに向かった。
◇◇◇
アラン「悪かったな、実は何人かに渡す物があるんだ」
アランは庭の隅をちらりと見た。それは、今朝までずっと、アランがどこからか運んできた物らしい。
アラン「武器は戦う上でめちゃくちゃ重要なんだ。みんなだいぶ古い武器を使ってないか?」
一同、顔を見合わせて頷き合う。教習所に来てからずっと同じ武器を使っている者もいた。
アラン「そこで、全員分とはいかなかったけど、ちょっとみんなの新しい武器を調達してきたんで、受け取ってくれ!」
アランは荷物の覆いを剥ぎ取った。すると、その中から新品の武器たちが姿を現した。
一同「うわぁ…」
揃って感嘆の声をあげるメンバー。我先にと、その武器の元へと群がっていった。