Chapter 31-19
翌日、アルムは剣を手にはせず、ただ体を休めることに専念することにした。さすがに1日では劇的な変化はないと分かっていたし、今は体を休めることの方が重要だと判断した結果だった。

かと言って、街に繰り出そうにも全ての機能が停止しているのでは意味がない。というわけで、アルムは当てもなく屋敷の中をぶらぶらと歩き回っていた。すると、ルーナに捕まってしまった。

ルーナ「あっ!いたー!」
アルム「…えっ?」

気付いた時には、既に腕を引っ張られていて。そのまま、アルムが抵抗もせずについて行くと、そこには見覚えのある物体があった。

アルム「…とらんぷ、だったっけ?」
ルーナ「せいかーい♪覚えててくれたんだね、ちょっとびっくりかも」

ルーナは笑いながら、「とらんぷ」を片手に、部屋の奥へと進んでいった。そこには、エド、ルージャ、ノイルが待っていた。

エド「アルム!久しぶりに一緒に遊ぼうぜ!」
ルージャ「今度はアルムにも、ちゃんと1からルールを教えるからさ!」
ノイル「この前は少ししかできなかったから、いつかいっぱいやろうと思ってたんだ!」

3人も笑顔でアルムを出迎える。アルムは嬉しく感じてその気になり、彼らとの遊びに熱中した。

◇◇◇

気がつけば、夜はすぐに訪れていた。外が暗闇に包まれた頃、アルムは彼らに例を言って遊びを終わり、そのまま部屋ではなく広間に向かった。


アルム「…みなさん」

物言わぬ石像と化しているラルドたちに、アルムは言葉をかけた。

アルム「明日は、頑張ります。みなさんの教えを思い出して、精一杯戦います。だから…待っていて下さい。必ず、みんなで元の賑やかな街を取り戻してみせます。必ず、みなさんを元に戻してみせます」

そう語りかけるアルムの顔は、決然とした表情だった。弱い心を持った少年の姿はどこにもなく、本当の意味での「選ばれし者」として、精霊から託された使命を全うせんとする1人の戦士の姿が、そこにはあった。

アルムはくるりと背を向けて、広間を後にした。そして、アランには悪いが、今日はもう眠ってしまおうと思い、部屋に戻っていった。まだ早い時間ではあったが、存外眠りに落ちるのは早かった。
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