Chapter 31-17
アルムにとって、理由はそれだけにとどまらない。

アルム(ぼくはやらなきゃいけないんだ…もう逃げたりするもんか…!)

選ばれし者、その肩書きももう苦にはならない。むしろ自らを強くする魔法といえる存在になっていた。

アルム「ぼく、アルファたちを倒したいです。だけど…」

アルムに迷いはなかったが、言葉が濁った理由は、容易に想像できた。アルファたちがどこに向かったか、皆目見当がつかないのだ。

しかし、アランには心当たりがあった。それは、アルファが最後に残した言葉だ。

アラン「…ひょっとしたら、奴らはネクロゴンドにいるかもしれない」

タア「ネクロゴンドだと…!」
エド「でも、いるかもね…あそこになら」
セリス「ねくろ…ごんど?」
アンナ「…何ですか、それは?」

ネクロゴンドを知る者と知らない者で、反応ははっきり分かれた。知らない者のために、アランは簡単な説明を加えた。

アラン「ネクロゴンドってのは、上の世界にある地方のことだ。ちょうどアリアハンから、ランシールを越えて西にずっと進むとある。昔そこに世界を狙ってた魔王が城を構えてて、麓にある町が一度壊滅させられたらしい。だから、あまりいいイメージがないみたいでな、ちょうどこっちの世界のロンダルキアみたいなもんだ」

すらすらと説明するアランに、一同はぽかんとした。

レイシア「…詳しいですね」
アラン「なに、このくらいなら本にも書いてあるさ。それに、みんなに会う前にも行ったことがあるしな」
ルーナ「とにかく、敵はネクロゴンドにいるんでしょー?行ってやっつけちゃおうよ!」

ルーナの言葉に、数人が同意する。アルファたちがネクロゴンドにいるにしろいないにしろ、行くだけ行かねば何も始まらない。もう引き返せる状況でもない。とる道は1つだ。

アラン「ただ…忘れてはいけないのが、ザルグの存在だ」

アランは苦々しげな口調で言った。そう、敵はアルファだけではない。

アルム「もちろんです。ザルグを倒さなきゃ、この街は元に戻らない…」
ユリス「全力で戦います。わたしたちを教えてくれた、ここにいる人たちのためにも…」
リズ「1年以上受けてきた教えを、無駄にはしません」

1人1人の目には、鋭い光が宿っていた。それは、1年以上に渡って積み重ねてきた努力と経験、そして自信の証だった。
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