Chapter 31-9
―――アルム、覚悟…!
そう叫んで、かつての教習所での仲間…ロエンは、攻撃を仕掛けてきた。アルムはとっさに身をかわして、集団から外れた方向に動いた。
アルム「やめてよロエン!ぼくは、きみと戦いたくなんかないんだ!」
その後も次々と繰り出される攻撃を全てギリギリで避けながら、アルムはそう叫ぶ。しかし、その声はロエンには届かない。
ロエン「うるさい!僕はおまえを倒して、あっちに行くんだ!」
アルム「何言ってるの!あいつらは悪いやつらなんだよ!?」
ロエン「何も…何も知らないから、アルムはそんなことを言えるんだ!」
ビシィッ!!
ロエンの鋭い蹴りが、アルムの顔にヒットした。アルムは体勢を崩し、後ろに倒れ込んだ。口の中で微かに血の味が広がった。
アルム「痛っ…!」
ロエン「…なんで!」
ロエンは声を荒げ、アルムを見下ろして叫んだ。
ロエン「なんで攻撃してこないんだよ!」
アルムは口元の血を拭って、無言で立ち上がった。アルムはロエンに対して一度も剣を抜いていない。少し離れた場所で戦う3人3人は、互いに武器を向けて攻撃をしているのに。
アルム「…ぼくは、きみとは戦えない」
ロエン「なんだって…?僕が敵だってこと、まだ分からないのか!?」
アルム「分かるわけないよ!ずっと一緒に頑張ってきたのに!なにが「敵」なの!」
ロエン「………!」
アルム「もう1回、一緒に頑張ろうよ…!妹だって一緒に助けようよ、何でも1人でやろうとしたらだめだよ!」
ロエンはアルムの必死の言葉に、ただ俯いた。
アルム「手遅れなんかじゃない…今からでも一緒に頑張ろう…?」
ロエン「アルム…」
ロエンは顔を上げた。が、その表情はアルムを嘲るかのようなものだった。
ロエン「…バカじゃないの?」
アルム「…ロエン…!」
ロエン「どこまで甘いんだよ…?いいよ、教えてあげるよ。本当のことを…!」
発せられたその声はもはや、ロエンの声ではないようにも思われた。
ガンマ「…あいつ、しゃべる気だな。いいのか、アルファ?」
アルファ「私に聞く理由が分からないわね。ロエンが何を話しても、私にさしたる影響はないわ」
アラン「…余所見をするな!」
ガンマ「おっと!」
アルファ「これは失礼。なら少しだけ本気でいくわ…」
ロエンには目もくれず、アランたちと戦いを続けるアルファたち。アルムは1人、ロエンの言葉に耳を傾けた