Chapter 31-4
アリュード「………!!」
アリュードのいる場所からも、その様子ははっきりと見えた。そして爆発の煙の中で、レイシアとルーナが強く壁に叩きつけられるところも確認できた。
アリュード「(…僕がやらなきゃ…!)おい!お前の相手は僕だ!!」
状況を見て、これ以上2人にダメージがあると危ないと考えてか、アリュードはベリアルに向かってそう叫んだ。すると、ベリアルはくるりと向きを変え、槍の狙いをアリュードに定めようとした。
しかし―――アリュードは既に動いていた。
アリュード「てやぁっ!!」
相手の巨大さを逆手に取り、さっと懐に入り込む。この距離であれば、長い槍と双剣ではどちらが有利かは自明だ。
ザシュッ、シュパッ、ズバッ!!
アリュードの握る2本の剣が華麗に舞い踊るように動き、ベリアルの体を切り裂いていく。その動きは、アンナの舞いに瓜二つだった。
◇◇◇
アリュード『こうかい…?』
アンナ『んー、そんな感じだね。あとは右足をこう…』
◇◇◇
アリュード(今度アンナにお礼を言っとかないとな…)
剣の舞の原型を伝授してくれたアンナに感謝しつつ、アリュードはさっと後ろに下がった。そして、ちらりと仲間たちを見る。
アリュード(やっぱり…だめか…!)
3人とも大きなダメージを負っているのか、どうやらまだ戦える状況ではないようだ。
アリュード「…うわっ!」
とっさに身を捩って、突き出された槍をかわす。その時、アリュードはあることを思い出していた。
◇◇◇
アリュード『…僕にしかできないことなんて…あるんですか?』
ディル『ああ。左手でも剣を振れるのはお前だけだ。とっておきを教えてやる、ちょっと剣貸せ』
◇◇◇
教習生の時、ディルに教わった剣技。しかし、アリュードはそれを繰り出すのに躊躇いを感じていた。その理由は大体分かるだろう。
アリュード(だけど…やるしかない!)
アリュードはぐっと両手に握った剣に力をこめると、ベリアルのちょうど腹の真ん中あたりを見据えた。
*「…イオナズン!」
再び大爆発が起こる。ユリスはそれを力なく見つめるしかなかった。
ユリス「…アリュード…!」
ユリスが祈るように目を瞑ったその時、戦いは決着していた。彼女が目を開いた時、ベリアルは縦横に切り裂かれ、倒れていたのである。そしてその手前にはアリュードがいた。
アリュード「…クロスブレード…僕にもできるんだ…!」
しかし―――爆発によるダメージを受けたのか、アリュードはそう呟くとそのままそこに倒れてしまった。
ユリス「アリュード!」
立ち上がって、アリュードの元に駆け寄るユリス。が、アリュードには意識があった。
アリュード「僕はいい…それよりあの2人を…!」
苦しみ混じりの声に迷いながらも、ユリスはレイシアたちに呼びかけた。
ユリス「レイシア、ルーナ…大丈夫…?」
ルーナ「あたしもレイシアも大丈夫だけど…」
レイシア「残念だけど…この傷じゃ上には行けないわ…」
ユリスは腕に重傷を、それ以外の3人は全身に火傷を負っていた。上で戦う仲間たちに加勢しに行くことはできない。
それから数十秒の沈黙が流れた後、ルーナが突然こんなことを口にした。
ルーナ「ねーみんな。あたし…ちょっと試したいことがあるんだけど…いいかな?」