Chapter 2-5
部屋に戻ると、他の科目を取っている生徒は既に戻っていた。ここで1つ疑問が浮かんだアルムは、セリスとレイシアに質問をぶつけた。
アルム「ねえ、どっちかの訓練に、アリュードいた?」
セリス「アリュード?いや、そう言やいなかったな」
レイシア「私たちのところにもいなかったわ。アリュード、訓練を抜け出して何をしてるのかしらね…」
いくら考えても、答えが見つからない。しばらく3人であれこれ話し合っていると、アーロンが部屋を覗くようにして、早口で言った。
アーロン「次の戦術学の訓練は庭で行う!時間に遅れるな!」
それを聞いて、生徒たちはあたふたと準備を始める。アルムも準備を終えて、部屋を出ようとした時、タアとすれ違った。
アルム「タア?………一体どうしたの、その傷!?」
戻ってきたタアの顔は、いくつかの擦り傷があり、やや赤く腫れていた。アルムが心配そうに声をかけるが、タアは返事を返さない。
アルム「まさか…ゼクトル先生に…?」
タア「うっせーんだよ!!オレにいちいち関わってくんな、うっとうしい!」
自らの椅子を蹴飛ばして、アルムに怒鳴るタア。その言葉を聞いて、アルムの表情から色が消えた。
アルム「…そう。ごめんね。…次の訓練は庭でやるらしいから、遅れないでね」
アルムはそう告げて、部屋を後にした。タアはその後ろ姿を睨む。彼の顔の傷は、ゼクトルとの素手の殴り合いでついたものだった。「今から1分間、俺を1回でも殴れたら、お前の望んでる訓練をしてやるぜ―――」と言われて臨んだのだが、結果はこの通り、タアの拳がゼクトルの顔を捉えることはなかった。タアは時計を見ながら、殴り合いの後ゼクトルに言われたことを反芻していた。
『いいか、お前はまだこんなもんじゃない。お前が「本当の強さとは何か」に気づいた時、お前は誰よりも強くなれる。俺や、アーロンたちよりもな…』
タア「わかんねぇ…本当の強さって…何なんだよ…!」
ドン、と拳で机を叩くタア。その時、時計の針がカチッと動き、訓練の開始をタアに知らせた。