Chapter 2-4
タア「…上等じゃねぇか…!!」
アルム(やっぱり乗った…一体どうなるんだろう…)
タアの、大剣を持つ手が震えていた。どうやらかなり頭に来ているようだ。ユリスとリズも、さすがに訓練を中断せざるを得なくなってきたようで、アルムと同じくタアとゼクトルから離れていた。
ゼクトル「いつでも来いよ。お前には、俺を倒すっていう特別課題をやるぜ」
タア「…うるせぇ…!!」
タアが動いた。素早い動きで懐に入り、大剣を振り下ろす。完璧に捉えた、アルムもそう思った。ところが、ぶん、と大きな音を立てて、大剣は見事に空を切った。
アルム「消えた…?」
ユリス「いや、消えてないわ。タアの後ろに回り込んでる」
ユリスの言う通り、ゼクトルはタアの後ろにいた。そして、タアの首に剣を当てる。
ゼクトル「…1回死んだ」
タア「…この野郎…!」
なぎ払うように大剣を横に振るタア。しかし、またしてもその刃がゼクトルを捉えることはなく、虚空を切り裂くだけだった。
ユリス「…見えてないわ」
アルム「えっ?」
ユリス「タアは怒りで何も見えてない。戦いの場面では、絶対に気持ちを鎮めなきゃならないの。だけど今のタアは…」
リズ「…その通りね」
ちょうどその時、再び剣撃をひらりとかわしたゼクトルが、自らの剣の刃先をタアの喉元に突きつけた。
ゼクトル「…2回死んだ」
タア「くっ…!」
ゼクトル「…特別訓練は終わりだ。もう十分だろ、課題に戻れ」
結局その後の訓練中、タアは一度も剣を振ることはなかった。
◇◇◇
ゼクトル「いいか、焦らなくても、お前たちはまだまだ強くなるんだ。だから、ゆっくり一つ一つ身につけていけ、いいな」
「はい」と答えて、それに対して「じゃ、解散」と言った後、ゼクトルはタアを呼び止めた。少し気がかりではあったが、いつまでもいてまた何か言われると厄介なので、アルムはリズと一緒に早々に部屋に戻ることにした。ユリスは「わたし、少し用事があるから」と言い残して、2人とは別行動をとった。
アルム「ユリスの…用事って何だろう?」
リズ「…あまり詮索しない方がいいんじゃない?」
素っ気なくアルムに言って、リズはそのまま戻っていった。アルムは足を止めて、思いを巡らせていた。