Chapter 29-15
その異常な光景を目の当たりにして、初めアルムたち3人は眼を信じなかった。否、信じられなかったのだ。そしてそれが現実だと認めた後、突然色を失った港町に行くのがとてつもなく恐ろしく感じられた。

リズ「とにかく、行ってみるしかないわ。何が起こってるか分からないもの」
セイファー「そうだね、確かめなきゃ。行こう、アルム」
アルム「あっ…うん…」

頭に渦巻く恐怖心を払いのけ、アルムはルプガナへと駆け出した。それから数分後―――街の入り口で3人が見たものは、さらに信じられない光景だった。

アルム「…街の人たちが…止まってる…」

ルプガナ一番のメインストリート。今や昼間は毎日のように人がごった返す通りだ。その通りに出ていた大勢の人々が全て、まるで人形のごとく動きを止めていた。さらに、それだけではない。

リズ「みんな…灰色だわ…」

そう。動きを失った街の人々は、その色さえも失っていた。全ての人が、暗い灰色になっていたのだ。

セイファー「うそだ…それじゃ、屋敷の中にいる人も…!」
アルム・リズ「!!!」

3人は戦慄した。ここから見える屋敷の屋根…やはり灰色。あの屋敷には、自分たちの仲間が大勢いたはずだ。この状況を見れば、その仲間たちがどうなっているかは、容易に想像できる。

アルム「行きたくないけど…行かなきゃね…」

怖い。すごく怖い。しかし、足は動かずにはいられないようだ。気がつけば、3人は全速力で屋敷の方に走っていた。


ギィィ…。灰色の扉は、そんな音を残して開いた。中もやはり灰一色。そして、広間へ続く扉を開いた後、3人は衝撃の光景を見た。

アルム「あっ…ああっ…!」
リズ「うそ…でしょ…?」
セイファー「そんなことって…!」

3人は驚愕し、そして絶句した。広間の中で立ったまま身動きしない者たち…それは、3人にとってあまりに見覚えのある人物ばかりだった。

アルム「…ラルド…さん…!」
リズ「アレクさんに…クラリスさん…!」
セイファー「キットさんまで…!」

ただ動かなくなっている、頼れる者たち。突きつけられた現実は、あまりに残酷だった。その現実を受け止め切れなかったリズは、その場に力なく座り込んでしまった。

リズ「…っ…そんな…っ…!」

リズの隣にいるセイファーも、うなだれて俯いている。アルムはその場にいられなくなり、何かの衝動にかられたように広間を飛び出し、屋敷の中を駆け回った。
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -