Chapter 29-14
天界王「私の犯した過ちはもう元には戻らぬ。しかし、私は持てる全ての力を以てそなたたちを援けられればと思う。どうかこれを…受け取ってほしい」
天界王が目を閉じて何かを呟くと、アルムの前には刃が光を放つ剣が現れ、リズには光が降り注いだ。
天界王「その剣は、刃が精霊の力を纏った精霊の剣という剣だ。かつての勇者キースも手にしたことがある一刀だ。それからそなた…リズ=クライストール。そなたの力は、まだまだ未知なる可能性を秘めている。更なる力を求めるのだ。強い心を持ったそなたなら…乗り越えられる」
アルムは剣を手にした瞬間に、この剣の力を感じ取った。今まで使っていた剣とは比較にならない軽さ、そして不思議なほど手に馴染む柄。2、3回素振りをしてみても、その威力の違いは火を見るより明らかだった。
一方でリズは、自身に流れ込んだ力に戸惑っていた。体中に力が満ち満ちた感覚。そして…何やら出来なかったことが出来るようになっている気がした。
アルム「ありがとうございます!」
天界王「うむ。しかし、アルムよ、精進を怠るでないぞ。そなたの力が増せば、その剣の力はそれ以上に跳ね上がる。精霊の剣、使いこなしてくれ。さて…それでは、少しばかりつらい現実を見なければならないが…そなたたちを、ルプガナへ送ろう」
ごくりと喉を鳴らすアルムたち。一体、ルプガナで何が自分たちを待ち受けていると言うのか。その不安な思いを抱いたアルムたちは、天界王が作り出した光の玉に閉じ込められ、そして消えた。
だが…彼らを待ち受ける現実は、想像以上に過酷なものだったのである。
光が消えた時、アルムたちは広い広い草原にいた。どうやら、ルプガナの西に広がる大平原のようだった。しかし、決定的に違うことがあった。それは…ルプガナの街の色だ。
アルム「ねえ、あれ見て…!」
一番初めに気づいたアルムが、東にあるルプガナの方を指差す。見れば、その街並みは鮮やかな色を失い、連なる建物全てが灰色へと変わっていた。足元の草も、森の方にある木の幹や葉も、色は変わらないのに、ルプガナの街だけがモノクロで映し出されていた。