Chapter 28-9
???「やっぱり来たか…そろそろ来る頃かと思ってたけどな」

見覚えのある姿が、4人の目に映る。聞き覚えのある声が、4人の耳に届く。そして、振り向いた瞬間、4人はその者が誰かを確信した。

クラリス「…ディル…?」

クラリスが驚きの表情で言う。一方、ディルはこちらが来るのを分かっていた、という感じだ。

ディル「…ま、俺もついさっき来たところなんだけどな」
クラリス「ちょっと待ってよ、これ…もしかしてあなたがやったの?」

一瞬止まっていた思考を、徐々に回復させていく。ディルであれば、数分あればこの状況を作ることは可能だと思った。しかし、ディルは少し笑って。

ディル「なんで俺が、んなことしなきゃいけねえんだ?俺はただ、あいつを取りに来ただけだ」

そう言って、ディルは倒れている男に近寄った。武装兵ではなく、王族に近い衣装を着た男だ。

ディル「ここに攻め入った奴が誰かは知らねえけど、詰めが甘かったみてえだな。こいつ、まだ生きてんだ。大臣の衣装なんざ、ろくに身を守ってはくれないだろうに、悪運だけは強い奴だぜ…」

首根っこを掴み、ディルはその男…大臣、エルガを荒々しく持ち上げる。そして、微かに呻いたエルガに、ディルは嘲笑うかのように話しかけた。

ディル「なあ、どうだ?絶対の自信があった天上軍を蹴散らされた気分は?」
エルガ「…っぅ…ぁ…」
ディル「…どこのミイラなんだか」

嫌悪感丸出しといった表情で、ディルはそう呟く。ディルが一番嫌いなのは、周りの力を頼ってばかりで己では何も出来ない者。エルガはまさしくその定義を満たす者だ。

ディル(本当ならこんな奴、この場で終わりにしたいとこだが…あいつらもなんでこんな奴が必要なんだか…)
クラリス「ディル、お願いだからもう止めにしましょう。私たちだって、あなたと戦うことなんて出来ないわ。私たちの敵は、アルファ、ベータ、ガンマなんだから…!」
ディル「…なんだ、もう面割れてんのかよ。だったら、なおさら早く戻らねえとなあ?アルファ「ちゃん」とガンマ「くん」が待ってるぜ?」

ディルはエルガ…いや、ベータにそう告げる。それも、か弱い子供に言うかのように。

だが、この言葉で、クラリスは重要な手がかりを掴んだのだった。
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