Chapter 28-8
城へ向かう道の途中には、武装兵たちがそこかしこに転がっていた。これは、自分たち以外の誰かがこの道を強行突破したことを意味する。
しかし、一体誰が…などということを気にしている者はいなかった。逆に言えば、今のこの4人にとっては、それはどうでもいいことだったのだ。
ラダトーム城の門も、その向こうの入り口の大扉も大破し、かなり離れた場所からも城内がわずかに窺える。折り重なって倒れている兵たちを飛び越え、4人は城に入った。
内部もかなりひどかった。城壁は一部が瓦礫と化して辺りに散乱しており、派手に争ったことが分かる。そして、例によって武装兵たちもいたるところに倒れていた。城に入るとすぐに囲まれると見ていたクラリスたちは、ひとまず落ち着いて足を止める。ここで、先ほどは気にしなかったことを気にし始めた。
アルム「…誰が?」
レイシア「…分からないわ。ただ、私たちが城下町に来た時は、まだ城に続く道にはうじゃうじゃ兵士が見えてたから…」
そうなると、クラリスは1つの可能性にたどり着く。
クラリス「…私たちが攻め込んだことを、1人の兵士が通達しに行ったわよね」
タア「さっきのあいつがやったってのか…?あれは敵じゃねぇか…」
クラリス「顔まで隠してるのよ、誰だか分からないわ。あの格好さえすれば、兵士たちに紛れられるんだから。でも…まさかね」
最後にクラリスはそう呟き、1人ふっと微笑する。
ちょうどその時、天上軍でないと思われる男が現れた。傷を負っているようだ。
*「私は…ラダトーム軍の兵士だった者だ…他にも何名か生き残りがいる。国王陛下は、我々が安全な地下牢にお運びした。城の破壊はやむを得ないと伝えてくれ、と仰っていた。あの大臣をどうか打ち倒してくれ…」
そう言って、男はその場に倒れた。どうやら気を失ったようだ。
クラリス「王様を心配する必要は今はないみたいね。私たちは偽大臣を倒しに行きましょう」
クラリスの言葉に従い、3人も王の間へと向かう。
アルム「………」
城の破壊はやむを得ないと言うが…ここまで破壊できるものなのか。1人でこんなことができそうな人物を、アルムは今まで数人しか見ていない。しかし、確信がないので、口には出さなかった。
クラリス「…とにかく、大臣を探しましょう。きっと王の間かどこかにいるはずだわ」
クラリスの言葉に3人も同意し、王の間に続く階段を上っていった。
階段を上った先にある扉は、扉として機能していなかった。片方の扉が外れ、床に倒れている。
クラリス「閉じこめられる心配はないみたい…」
レイシア「…えっ?」
クラリス「何でもないわ。行きましょ」
クラリスを先頭に、4人は王の間に踏み入った。そこにいたのは、彼女たちの予想を遥かに超える人物だった。