Chapter 27-14
アルムは遠慮がちに、「ねえ…レイシア」と声をかけてみた。すると、彼女らしい元気な声で「どうしたの?」という言葉が返ってきた。
アルム「レイシアは…怒ってる?」
レイシア「いきなり何を言うの…怒ってるって、何に?」
アルム「ぼくにだよ。4ヶ月、剣の練習も何もしてなかったんだ…」
少し後ろめたさを感じてなのか、俯き加減にそう言うアルム。それでもレイシアは、首を振って答えた。
レイシア「そのことに私が怒る意味はないわ。アルム自身が悩んで、どうするか考えて、それで行動することだもの」
その答えに、アルムは心底安心した。重くなり続けていた体から、いくつか枷が取れたようだった。
アルム「…そう。レイシアは、そう思ってくれるんだ」
レイシア「うん。だから後は、今までアルムがとった行動も含めて、反省したり、課題を見つけたりすればいいんじゃないかしら」
アルム「うん…ありがとう。ぼく、やってみるよ」
レイシア「頑張ってね。みんなを見返すつもりでね…あっ、ここだ」
レイシアが足を止めた場所は、アルムが入ったことのない部屋だった。コンコン、とノックをして、「レイシアか、入ってくれ」と返事が返ってきたのを確認してから、「失礼します」とドアを開いた。
ラルド「相変わらずお前はしっかりしているな。キースなどノックをしている場面を見たことがない」
苦笑しながら、ラルドは近くの椅子に2人を促した。言われたままに、2人は椅子に腰掛ける。
ラルド「話の前に、アルム、少し深呼吸をしてくれ」
ラルドの意外な要求に戸惑いながらも、アルムは頷いて深呼吸をした。少しだけ、気分が落ち着いた気がした。
ラルド「クラリスが、敵の正体に大体の目星がついたと言っている」
アルム「えっ?」
レイシア「本当ですか?」
ラルド「本当だ」
ラルドは1枚の紙を取り出した。それは、いつか宿屋でメモに使ったあの紙だった。アルムは最初、「まだ持ってたんだ」と思った。
そこに新たに書かれていたのは、名前だった。それはラダトームが迎えている危機に大きく関わる、重要な手掛かりだった。
〜続く〜