Chapter 27-8
*「悪いけど…少し聞かせてもらったよ。アルム、お行きなさい。おまえを教習所に行かせた時に、お父さんと2人で決めたんだよ。おまえが後悔しない道を選ばせてやるって。だけどね、こんな素晴らしい友達と、一緒に力を合わせるのは当然じゃないのかい?おまえは十分強い子になったわ、保証してあげる」
母親からのこの一言で、アルムの迷いは断ち切られた。すっ、と立ち上がると、長く使っている自分の剣を手にとって、その刀身を見た。帰って来たときに手入れしておいたので刃こぼれなどは目立たないが、それでも数多くの戦いの記憶がしっかり刻まれているように見えた。
アルム「セリス…ごめん」
セリス「ん…何が?」
一瞬、セリスはこの一言を「一緒に行けない」と取った。しかし、アルムはセリスの方を向いてこう言った。
アルム「勝手に怒鳴ったりして…きみが全部正しかったのに」
セリス「………」
アルム「…ぼく、もう一回頑張ってみるよ。どんなことでも、ぼくにできることをやってみる」
セリス「…ああ、それがいいぜ。俺も悪かったな、その…ついカッとなっちまって」
アルムは頷いて、今度は母親の方を見た。先ほどのように、アルムのいない時にベラヌールがまた襲われたらという懸念はある。が、彼女はそんな素振りも見せずに、アルムに微笑みを向けた。
それからしばらくして、旅の支度を済ませたアルムは、玄関先で母親に見送られた。
*「行っておいで。こっちは心配いらないから、気にせず頑張りなさい。それから、自分の気持ちに正直になること。誰かから何かを言われて、すぐに考えを変えるようじゃ、強い人間にはなれないよ」
アルム「うん…ありがとう。それじゃ…行ってきます」
「分かった」のかわりに「ありがとう」と返したアルム。親子の会話には、この言葉で十分だった。
アンナ「さて、それじゃ行こうか!」
セリス「そうだな、あっという間だから、最後にしっかり顔見とけよ!」
セリスはアルムにそう言って、懐からキメラの翼を取り出した。そして、それを高く放り投げた。
「港町、ルプガナへ!」
そう叫んで。
飛び立つ3人が見えなくなるまで、彼女はそれを見つめていた。それから、わずかに小さな声でこう呟いた。
*「アルム…頑張るんだよ…」