Chapter 27-2
何より―――この時、また旅に出るつもりなどアルムにはなかったのだが。
アルム「………」
少しの間、思いに耽る。最初、頭の中で「選ばれし者」だとか言われた時は、ずいぶん前向きに受け止めたものだ。しかし、その言葉がアルムを陥れようとした天界王の罠だったと気づいた後は、その事実でさえ否定的にとらえるようになっていた。結局、ぼくは違うんだ。そう考えてもみたが、それでは天界王が自分を狙った理由が説明できない。だから仕方なく、アルムはこう解釈して合理化していた。
アルム(…選ぶ人を間違えたんだ。きっともう別の誰かが選ばれてるよね…)
第一、自分には何もできないと分かっている。ならば余計なことに首を突っ込まず、家族と静かに暮らしているのがベストであるに決まっている―――少なくともアルム自身はそう考えていた。
しかし、嫌でも首を突っ込まざるを得ない時が、刻々と迫ってきていることに、まだ彼は気づく由もなかった。
◇◇◇
それはラダトームの軍隊解散の知らせからちょうど一週間後のことだった。
*「ほい、サービスだ。持っていきな」
アルム「またこんなに…!?いつもありがとうございます」
道具屋に買い物に来て、いつものようにサービスをつけてもらい、帰路に就こうとした時、アルムは北の空から何かがやってくるのが見えた。
アルム(何だろ…)
頭より先に、体が動いていた。幸い家はそう遠くない。大急ぎで荷物を置き、階段を駆け上がって剣を手に取り、階段を駆け下りて外に出る。1年間教えられたことが、無意識に実践された瞬間だった。
いち早く、町の人々は建物に隠れたらしく、通りに人は見当たらない。そして北の空を見やると、その「何か」ははっきりと見えてきた。十数頭のドラゴンと、それに乗った鎧姿の兵士。アルムはその姿を、はっきりと覚えていた。
アルム「…あの兵士たちだ!!」
そう、それは天界王の前で、アルムを取り囲んだあの兵士たちに間違いなかった。自分を狙ってきた…アルムは瞬時にそう判断した。
*「…見つけたぞ、あそこだ!」
先頭のちょっと良いドラゴン(1頭だけ色が違う)に乗った兵士が、手に持った槍でアルムの方を指した。
まずい、このままではこの町はドラゴンの集中砲火を浴びる―――。とっさにそう考えたアルムは剣を構えつつ、先頭の兵士に向かって叫んだ。