Chapter 25-13
ジパングに初めて訪れたアルムたちは、その独特の文化に目を見張った。こう言っては失礼なのだが、何かと訳の分からないものがあったのだ。ただその中で、いくつか知っているものもあった。
アルム「あっ、あれってあやとり…」
ぼそっと呟いたアルムに、子供たちは一斉に反応した。
*「えっ、おにいちゃん、あやとりしってるの!?」
*「ねーねー、いっしょにやろうよー!」
わっ、と群がってくる子供たちに、アルムは困惑した。しかし、大切な用事があると告げ、どうにかその場を逃れた。
ラルド「アルム…あやとりとは何だ?」
アルム「えっ?…ああ、ひもを使った遊びです」
アレク「へえ、ひもなんて使うんだ。珍しい遊びもあるんだね…」
そんな話をしながら宿屋に向かう。しかし、たどり着いた先の宿屋にディルたち5人の姿はなかった。そこで、彼らは聞き込みを行おうとしたのだが、宿の主人がいきなり大きな手掛かりを与えてくれた。
*「そういえば、昨日から今朝にかけてここに泊まっていかれた方たちが、朝に洞窟に向かったきり帰って来ないんですよ。今日の分の宿もご予約なさってるので、少し心配なんですが…」
その言葉を聞き、ラルドの足はとっさに動いていた。それに慌ててついていく5人。
ユリス「あの…洞窟の場所をご存知なんですか…?」
ラルド「…ああ、忘れはしない。あの洞窟には、苦い思い出があるのでな」
ユリスの問いに、歩きながら答えるラルド。道中現れるモンスターたちも1人で次々と倒してしまう。
ラルド「帰って来ないということは、洞窟で何かがあったに違いない。急ぐぞ!」
アレク「(もう急いでると思うんだけどな…)」
洞窟に入っても、ラルドはその足を止めなかった。急に襲ってきた燃えるような暑さをものともせず、ただひたすら、深部を目指して突き進む。そのうちに、ほとんど走るような速さになっていった。
そして、洞窟の最奥、祭壇がある部屋で、既に汗だくになっていたラルドたちは複数の人影を見つけた。近づくと、それは確かに先発組のメンバーだった。
ラルド「…キット!」
キットたちは、壁に寄りかかり、座って俯いていた。肉体的にというよりはむしろ、精神的に疲労しているように見えた。少なくとも暑さに参っているようには見えなかった。
そして、それだけではなかった。その場には、4人しかいなかったのだ。
アレク「あれっ…ディルは?」
その言葉を聞いて、キットの顔が上がる。そうして、彼はややかすれた声で呟くように言った。
キット「すみません…あなたたちに言わなければならないことがあります」
クラリス「何が…あったの?」
キット「ロエンを見つけましたが…救出には至りませんでした。そしてもう1つ…」
少し間をおいて、キットの口がまた動く。その後の言葉を聞いて、ラルドたちの目の前は真っ暗になった。
…ディルが、寝返った―――。
〜続く〜