Chapter 25-9
船がダーマの港に入ると、乗っていた客は皆逃げるように船を降りた。それほど恐怖を感じていたのだろう。6人はそれほど動揺はしていなかったが、早く地上に降り立ちたい、という思いは少なからずあった。
3年ほど前に一度壊滅してから、驚く速さで復興したダーマの神殿は、壁から何から、全てが新しい。参拝客や観光客も、非常に多かった。そのため、新しく作り直された宿屋も、かなりの人数が入る大きな宿となっていた。さらにどういうわけかは知らないが、かなりの格安で利用出来るのである。
ラルド「早めに宿屋に行こう。人混みはあまり好きではない」
ラルドがそう言って、宿屋へと向かう。その後を、5人は黙ってついて行った。誰もが、先ほどの出来事について何かを考えていた。それはラルドも同じことで、部屋にたどり着くまでは必要最低限のことしか口にしなかった。
ラルド「さて…何から話せばいいか分からないが…少し私たちに言い訳をさせて欲しい」
ユリスとアルムに向かって、ラルドはそう切り出した。
ラルド「今まで、時折耳にしただろう。私たちは、過去に旅をしていた、と」
アルム「はい、いろんな場所で何回か聞きました」
ラルド「その旅というのが、世界を救った旅そのものだった」
ユリス「…詳しく教えてくれませんか?」
「ああ」と答えて、ラルドは一度大きく息をした後、再び口を開いた。
ラルド「3年半…詳しい時期は分からないが、それくらい前に、ルプガナの屋敷から1人の青年が旅立った。名前はキース=クランド。彼はラダトームに渡り、そこで事件に巻き込まれた」
アルム「…ちょっと待って下さい。ルプガナの屋敷、って…!」
ラルド「そうだ。お前たちが、そして我々が1年間過ごしたあの屋敷で、キースは育った。私の祖父が、彼の両親と面識があってな。彼が小さい頃に両親を亡くした後、祖父はキースを引き取って私と一緒に育てた。だから私とキースは幼なじみだった。よく喧嘩をしたもので、ある時私は少し1人になりたいと思った。だから、修行をしたいなどと理由を付けて家を飛び出した。それが、キースが旅立つ2年前の話だ」
そこまで話すと、ラルドは「続きを頼む」と言うようにアレクたちを見た。それを察したのか、続いてアレクが話を始めた。