Chapter 25-4
その名前を聞いて、また男の口元が上がる。その反応からして、アレクとクラリスの言葉には一切の間違いがないことをラルドやアルムたちは知った。

ザルグ「衛兵時代の称号まで記憶に留めていてくれたとは…なんとも畏れ多いな…」
アレク「…冗談はやめてくれ、なんでお前は生きているんだ…!?」
ザルグ「お前たちがかつてよく振りかざした言葉…私は今も憶えているが」

そう言って、ザルグは一瞬言葉を切った。

ザルグ「奇跡…そう呼ばれるものが起こったと考えるのが、最も妥当ではなかろうか?」
クラリス「奇跡…ですって?」
ザルグ「馬鹿馬鹿しいなどと思わないことだ。その思いは、お前たちの道を全否定するに等しいのではないか?」

ラルドたちは言い返せない。確かに、かつての自分たちの旅には「奇跡」がつきものだった。言うなれば、1人の人物と出会ったこと自体が奇跡とも言えるのだ。

ザルグ「とは言え、私は奇跡というものを認めてはいない。少し説明をしてやろう」
ラルド「説明…だと?」

ラルドの問いに、「その通りだ」とザルグは返す。ラルドは彼を初めて見るので、アレクたちに比べて平静を保っていられた。

ザルグ「最初に教えてやろう…3年前、勇者キース=クランドにガルドス様を打ち倒された理由は、私にある」
ラルド「どういう意味だ…お前との戦いと、ガルドスとの戦いに何の繋がりがあると言うんだ?」
ザルグ「あの時…3年以上前に遡るな…私は確かに、ディルに切り裂かれ、息絶えたはずだった。しかし…気がついた時、私は狭い空間の中で生きていた。確かに、体の何もかもが元に戻っていたのだ。私はその空間で、私の蘇生に気づかれたガルドス様にその理由をお聞きした…」

信じられないような話が、淡々となされる。6人は、それをただ聞いていた。

ザルグ「ガルドス様は…そのお力で、私をこの世に呼び戻して下さったのだ。そして、その時に私に自らの持たれる力の少しをお与え下さった…」
クラリス「つまりは…ザオラルの死者蘇生版というわけね…」
ザルグ「その通りだ。だが私の肉体は一度死んでいるため、全ての力を失っていた。ガルドス様から与えられた力では、あまりに少なすぎた。私は自らを再び鍛え上げるため、その空間に1年以上閉じこもり、ただ己を高めるのに費やした…」

それを聞いて、ラルドは自らの耳を疑わずにはいられなかった。
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