Chapter 25-3
甲板に出ると、前方に禍々しい気を放つ球のような物体が浮かんでいた。それを見る間にも、明らかにその気は高まっていた。
ラルド「…何かが来る…!」
ラルドがそう呟くと、それに答えるかのように、球体から謎の声が響いた。
???「残念だったな。どんな手段を使おうと、貴様らの行動は全てお見通しだ…」
その声が途切れると、球体が膨らみ、そして弾け飛んだ。放たれた凄まじい衝撃に、6人の体も吹き飛ばされそうになる。懸命に踏ん張り、腕で目を覆う6人。やがてその暴風が過ぎ去った時、球体のあった場所には長いマントを羽織った、2メートルは優に超えるほどの男の姿があった。
その男の姿を見て、アレクとクラリスは驚愕した。先程のラルドが驚いたのとは違う理由であった。目の前に現れたこの男を、確かに見たことがあるのだ。そう、3年以上前に―――。
前より大きくなっている。そして放つ闇の気も3年前の比ではない。ただ1つ、その顔だけはほとんど変わっていなかった。それは、確かにディルが真っ二つに切り裂いたあの顔だった。
???「久しい顔があるな…3年と少しばかり前以来か…?」
不敵な笑いを口元に浮かべ、そう呟くように言う男。よく聞けば、声も似ている気がする。…いや、似ていると言っては語弊があるか。目の前にいる男は、あの時の男と同じ人物だとアレクは確信した。
アレク「そ…そんなバカな…!お前は…お前は確かに、ディルが倒したはず…!」
???「ほう、やはり同じ者か。私の目に狂いはなかったようだ…」
クラリス「どうして…!どうして、生きて…!?」
ただ驚く2人を後目に、男はアルムたちを一瞥し、吐き捨てるように言った。
???「女子供、挙げ句天使まで引き連れているとは…全く呑気なものだな?」
ラルド「なぜそれを…お前は一体何者だ!?」
アレク「ラルド…名乗ってもらう必要なんかない…」
クラリス「ええ…私たちが十分過ぎるほどあの男を知っているもの…!」
いまだその表情を変えることが出来ずにいる2人。アルムたちは、男の放つ威圧感に、声を出すことさえままならない。
アレク「あの男は…僕たちが戦ってきた中で、間違いなく最強クラスの敵だった…」
クラリス「そうよ…だけど、ディルが倒したはずなの…私たちはこの目で見た…それなのに…どうして…!」
そして、一言発した2人の声が重なる。
アレク・クラリス「冥王…ザルグ…!!」