Chapter 24-8
『この手紙が、無事にあなたたちの手元に届くことを願います。
私たちは、サマンオサ南の洞窟に向かいました。しかし、そこにロエンの姿はありませんでした。
その代わりに、やや小柄な男が1人いました。どうやら彼も、「敵」の1人のようです。名前や素性を一切明かさなかったことから、テパにいた女と関わりがあるのは間違いないでしょう。戦うことはありませんでした。
ただ1つ、得られた情報があります。連中は、ロエンを殺すつもりはないようです。むしろ大切に扱っているとか。その男の口を滑らせ、それだけは聞き出せました。
そして、私たちはこれからジパングに向かいます。そこの洞窟は、何か事を運ぶのに割合適しているので、そこにいるかも知れないとディルが言っていました。皆さんも、この手紙を読んだらすぐにジパングに向かって下さい。洞窟に寄る必要はありません。
それでは、無事に会えることを祈っています。
キット=シェルト』
美しく整った字体だ。間違いなく彼の字である。そして、この手紙を読んでラルドたちにも分かったことがある。
ラルド「連中は、やたらと隠密に行動しているな…一体何をしているんだ?」
アレク「分からない…目的も何もかも、さっぱりだよ…」
クラリス「それに、ロエンを殺すつもりはないってどういうことかしら?」
ラルド「しばらく考える必要がありそうだな。アルム、ユリス、レイズ、お前たちも話に参加してくれないか。我々の気づかないこともあるかも知れないからな」
ラルドに言われて、「あっ、はい」と話に加わる3人。しかし、3人も話の筋が見えていない。そればかりか、彼らには初めて知ったことがある。
アルム「ラルドさん…この『テパにいた女』って誰ですか?」
ラルド「…そう言われれば、お前たちには話していなかったな。今の状況を整理しながら話すとしよう」
アレク「書くものなら、ここにあるよ」
状況を正しく整理するには、可視化するのが一番手っ取り早い。アレクは手帳の1ページを切り取り、ペンと一緒にラルドに渡した。
クラリス「ずいぶん準備がいいのね…」
アレク「情報戦になるかも、って思ったから、用意してたんだ。結構役立ってるよ」
そんな話を小声でする間、ラルドは簡単に敵のリストを作り上げた。