Chapter 23-9
アルム「…村?」
ひとまず岩山を西から迂回するということで、洞窟を出てからずっと西に歩を進めていたアルムたち。幾度となくモンスターの襲撃に遭うも、それらを退けて歩き続けていた。そして、少し歩くのが疲れてきたところで、前方に村のような集落が見えてきたのである。
レイズ「村…だね」
なぜか今は先頭を歩いているアルムとレイズが、そうこぼす。その後ろで、なんとも複雑な表情をしたユリスが小さく言った。
ユリス「…帰ってきちゃった」
と。
アルム「えっ?」
アルムはその言葉に反応する。帰ってきちゃった?最初は何を言っているのか分からなかったが、アレクの一言で、すべてが分かった。
アレク「レーベ…アリアハンの北にある小さな村だよ」
アルム「レーベ…!?それじゃ、ユリスの住んでた所って…」
ユリス「うん、あそこなの」
やりとりをする間にも、レーベの村は近づいてくる。
クラリス「ねえ、あの村で少し休憩しないかしら?」
ラルド「そうだな、アリアハンまではまだ3倍近い距離がある。夜まであの村で休むとしよう」
6人の意見は合致し、夜までの間レーベに留まることになった。
◇◇◇
アルム「ね、ユリスの家ってどこ?」
村を一通り見た後、好奇心からアルムはユリスにそう聞いた。しかし、ユリスはその問いに首を横に振って答えた。
ユリス「家は小さい頃に無くなったわ。それからはずっと宿屋に住み込みで働かせてもらってて…」
アルム「あっ…そうだったんだ…ごめん」
ユリス「ううん、気にしてないから。でも…やっぱり懐かしいな。何だか…懐かしい…」
そう繰り返して、ユリスの声がフェードアウトする。アルムは自分がベラヌールに帰ってきた時のことを思い出した。そういえば、教習所に行ってからベラヌールには帰ったが、家には帰っていなかった。
アルム「ぼくも…」
ユリス「?」
アルム「あっ、なんでもないよ」
そう取り繕って、アルムは笑った。裏側のないその笑顔につられて、ユリスもわずかに顔が綻んだ。