Chapter 23-7
3人が戻ってくると、待ちわびたようにアルムが聞いてきた。
アルム「ラルドさん、3人で何してたんですか?」
ラルド「この旅における進路と行程の打ち合わせだ。それと、あとは私事も少しだ」
とっさにそう言えるラルドを見て、アレクは後ろで(ラルドらしいや…)と微笑した。とても自分に真似できる芸当ではない。
そして、何の引っかかりもなくさらりとラルドが言ったものだから、アルムたち3人もそうだと信じて疑わなかった。
そんな中で、3人とうまい具合に距離ができた頃、クラリスはラルドに囁いた。
クラリス「アルムには…黙っていた方がいいみたいね」
ラルド「そうだな、まだあいつが知るべきことではないな」
ラルドも頷いてそれに返した。そこでふと時計を見ると、そろそろいい時間になっていた。
ラルド「よし、そろそろ昼食でも作るか。誰か作りたいやつはいるか?」
その言葉に、アルムとユリスが反応した。
アルム「あっ、ぼく作りたいです!」
ユリス「わたしも…料理なら自信あります。作ってみたいです」
ラルド「よし、じゃあ任せた。楽しみにしている」
すんなり任せられた2人は顔を見合わせて頷き合い、台所に立った。それぞれレイシアと、リズと共に磨いてきた料理の腕は並ではなく、その出来栄えはラルドにこそ及ばないもののかなり上等だった。
◇◇◇
アレク「さーて、美味しいご飯も食べたし、出発するとしようか!」
クラリス「そうね、あんな素敵な料理を食べたんだから、頑張らなきゃ!」
2人が笑って頷き合う。風は冷たいが、さほどアルムは苦には感じない。何と言っても、いよいよ出発を目の前に、気が高ぶっているのだ。もちろん、「ロエンを救い出す」という当初の目的は決して忘れてはいないし、この旅が命懸けであることも重々承知している。それでも、心のさらに奥の本能とでもいう部分が、この旅を待ち望んでいることは否定出来ないようで、アルムにはこの気持ちを押さえつけることなど到底不可能だった。
ラルド「アレクがひとまず最初の目的地まで運んでくれる。みんなアレクの周りに集まれ」
ささっ、と全員が素早く動く。おかげでアレクは躊躇わずにルーラの詠唱に入れた。
アレク「…みんな、行くよ!ルーラ!」
ふわり、と体が浮き上がる感覚。そしてその直後にはもう、雪化粧したルプガナの街並みは目の前にはなく、その代わりに、わずかに雪をかぶってはいるものの、神聖な空気が漂う祠が姿を現していた。