Chapter 23-6
少し間を空けて、ラルドは続ける。
ラルド「精霊ルビスの言うことだ。精霊の加護がどうのこうのと、精霊を信仰しきっている人間が大半のこの世界じゃ、精霊の言葉があたかも全て正しいという感じになっていたんだろう。だから私自身も、初めはキースがロトの子孫だと言われたことに何の違和感も感じなかった」
ラルドは淡々と話を続ける。その中で、これに関連して調べてきたということを話した。
ラルド「もう1つの決定的な証拠が、ライデインの呪文だ」
アレク「あっ…そう言われたらそうだ、アルムも使える!」
クラリス「でも…アルムもロトの子孫っていうことは考えられないの?」
ラルド「そうも考えてアルムの家系を調べてみた。ベラヌールでご両親にも直に聞いてきた。しかし、レンバート家は先祖代々王家には無縁で、ちゃんとした証拠もいくつか残っていた。だからアルムもロトとは関わりがない。あいつは本当に、ただ「選ばれた者」だったわけだ。キースと同じように、精霊にな…」
だから私が思うに、とラルドは話し進めていく。
ラルド「ライデインとは、勇者の血を引く者が使える呪文なのではなく、精霊ルビスがその能力を与えた者が使える呪文なのではないだろうか。現にローレシア、サマルトリア、ムーンブルクの3人の子孫はライデインを使えなかったと聞いている。もう1つ引っかかるのはロトの剣だが、これについてはもう勇者と呼ばれるべき人物が手にできる、という程度に解釈するしかないだろう」
しばらく沈黙が流れる。アレクもクラリスも、まさかキースが自分たちと変わらない普通の人間だったとは今の今まで思いもしなかった。だから、明かされた真実を受け入れるのにも時間がかかった。
アレク「まさか…それが真実だったなんて…びっくりして言葉も見つからないよ…」
クラリス「そうとしか言いようがないわ…これも1つの奇跡だった、ってことね…」
ラルド「ああ…我々ですら気付かなかったところで起こった奇跡が、全ての始まりだったわけだ。ディルとキットには、この旅が落ち着いたら話そうと思う」
3人は頷き合い、立ち上がった。そうして、色々に渦巻く感情を隠して、元の部屋へと戻るのだった。