Chapter 23-5
アレク「えぇっ…それ、本当なの…!?」
クラリス「とても信じられないわ…!」
驚愕する2人に、ラルドは「これが証拠だ」と言って、分厚い本のとあるページを開いた。そのページのタイトルを、アレクがゆっくりと声に出して読んだ。
アレク「ローレシアの内乱とロトの血の断絶…?」
ラルド「そうだ。この本は世界全土の有名な学者たちによって著されたらしい。ムーンブルクの図書室で見つけた。問題の部分はここだ」
ラルドはそのページのある部分を指差し、その通りに読み上げた。
ラルド「『ハーゴンの脅威が去った数年後、ローレシアにおいて内乱が起こった。そこで、新たに迎えられた王妃や、彼女との間に生まれた幼い子供をはじめとする多くの王族が亡くなった。後に見つかった王妃の遺体が最大の証拠である。しかしその事実を隠蔽しようと、国王はローレシア国外から呼んだ女性を亡くなった王妃に似せてまた新たな王妃とし、さらにその女性の連れ子だった子供を王子として育てた。様々な説があるが、当時の文献などからも、これが最有力視されている』」
重要な箇所を読み終え、ラルドは2人の顔をちらりと伺った。
ラルド「この記述から分かることは、ローレシアにおけるロトの血は、この内乱で途絶えていたということだ。だが家系図を見る限り、この連れ子が当たり前のように次の国王になっている。そしてその孫は、我々のよく知る人物だ…」
2人の目と口がゆっくりと開く。そう、とんでもない事実だ。ラルドが一番最初に言ったこと、それは。
キース=クランドは、ロトの血と何の関係もなかった―――。
アレク「だけど…ちょっと待ってよ。この本が嘘をついてるとは思えないけど、キースはルビス様にも勇者ロト本人にも、「ロトの血を引く」って言われてたじゃないか!」
ラルド「そのことだ。私は、精霊ルビスと勇者ロトにとって、キースがその気になることが重要だと思っていたのではないか、と考えている」
クラリス「それって、どういう意味…?」
ラルド「つまり、ロトの血を引いていないと告げると、当然使命感、義務感は無くなる。それによってキースが敵に立ち向かうのを止めてしまうかも知れない。それを避けようとして、彼らは「キースがロトの血を引いている」という虚偽の事実を作ったのではないか、ということだ」