Chapter 23-2
レイシアの後を追う形で部屋に戻ると、大部屋の台所に立っている人物を見てアルムは目を疑った。
アルム「ラ…ラルドさん…?一瞬誰かと思いました」
ラルド「お前もか…なぜ私がキッチンに立つと不思議そうな顔をする…」
聞こえてきたのはやや残念そうな声だが、アルムは思った通りのことを言ったまでだった。アレクたち4人は既知の事実なので普通にしていたが、アルムより少し早く戻ってきたレイシアや、つい先ほど起きてきたらしいユリスとリズは、滅多に見せないぽかんとした顔でラルドを見ていたという。
レイシア「だって…ズバリ言いますけど、ラルドさんって料理しなさそうに見えますし…」
ユリス「食べてる所しかみたことが無かったですし」
元生徒陣は皆同意見だった。それを見てアレクやクラリスは曖昧な表情をしている。
ラルド「…そうか…私に台所は似合わないか…だがみんな見ていろ、ここにいる全員の舌を唸らせる朝食を提供してやる」
そう言うと、ラルドは再びキッチンに向かった。
10分後。
アルム「………これ、何?」
レイシア「…朝ご飯だわ」
アルムたちはただ驚いた。机に振る舞われた超豪華な朝食のメニュー。それを見てから、今度はラルドに視線を向ける。するとラルドは、どうだ見たか、というような表情をしていた。
ラルド「食べるとするか。我ながら最高の朝食ができた」
目の前でその腕を見せられたので、アルムは何も言えなかった。もちろん、その料理の味は言うまでもないだろう。
セイファー「どうしてこんなに上手なんですか?」
レイズ「うん、僕も気になった」
2人がそう聞くと、ラルドは当然だと言うようにこう答えた。
ラルド「2年も1人で旅をしていると、嫌でも自炊をしないと生きていけないだろう」
アルム「2年…!?」
ラルド「私は16の時にここを出て、2年間世界中を放浪していた」
レイシア「ここ…!?」
ラルド「…お前たちには、何も話していなかったな。素性も知らない奴に教えられて不快だっただろう…今気付いた。悪かったな」
ユリス「そんなことありませんけど…」
ユリスに同意して他の3人も否定すると、ラルドは自分の過去について話し始めた。その間、アルムたちは朝食を食べつつ話に聞き入った。