Chapter 21-12
ムーンペタの町に到着した5人。セレイスは到着すると真っ先に、宿屋に部屋を取りに行った。時間もそろそろいい時間で、部屋が空いているか微妙だったが、無事に部屋は確保できた。
セレイス「さあ、明日はサマルトリアに向けて出発するよ。野宿もはさんでかなり歩くから、今日のうちにしっかり休んでおいてね?」
ルーナ「はーい♪」
ルージャ「分かったー!」
元気なルーナたちと対照的に、アルムたち2人は静かである。タアは元からこうであるが、アルムはどうやら何か考え込んでいるらしく、口数がいつもより少なかった。そして、その夜も1人寝付けずにいるようだった。
セレイス「…アルム、ちょっとだけ付き合ってくれないかな?」
アルム「えっ…?」
そんなアルムの様子を察して、セレイスはアルムを外に連れ出した。外といっても、宿屋の2階のベランダであるが。
セレイス「…月が綺麗だ。こんな綺麗な月、しばらく見てなかったよ」
空を見上げて、そう呟くセレイス。しかし、アルムは相変わらずの表情で俯いている。
セレイス「…どうしたの?暗い顔して」
アルム「…すみません」
セレイス「謝ることないよ。何か悩み事でもあるの?良かったら、僕に話してくれない?」
セレイスはゆっくりと、しかし明るい感じでそう言った。するとアルムは、ぽつりぽつりと話し始めた。
アルム「ムーンブルクの兵士の人を見て、かっこいいな、って思いました」
セレイス「うんうん…それで?」
アルム「…その時急に、『ぼくは将来何をしてるんだろう、何をすればいいんだろう』って思ったんです」
セレイス「なるほどね…」
自分の将来を考えていたと知り、セレイスは息をついた。しかしながら、セレイスにはアルムの気持ちは分からなかった。なぜなら、自分はそんなことに直面した経験がないから。
セレイス「…僕は、旅が終わったと思ったらすぐに、先生をやらないかって言われたから、その悩みを抱えていない。だから、君の気持ちを全部は汲み取ってあげられない。だけど…」
セレイスは一旦言葉を切り、それから強い意志のこもった眼差しでアルムを見た。