Chapter 21-8
セレイス「ところで、タアはどうしたんだろうね?」
ルーナ「あっ、あたしたち、タアをここに置いてったよ?」
ルージャ「1人で寝てたから…」
つまりは、誰もいなくなってから出て行ったということか。そうしたら、行方が全く分からないではないか。
セレイス「うーん…まあタアのことだから、きっと街の外れで特訓でもしてるんじゃない?」
ルーナ「あ、そっか!」
ルージャ「じゃあ大丈夫だよね!」
あっさり心配されなくなるタアも、何だか…と言えばそうだが。
しかし彼らの予想は大きく外れていた。夜になってタアが戻ってきた時、居場所を尋ねると「城にいた」という答えが返ってきたのだ。
セレイス「城?」
訝しげにそう繰り返したセレイスに、タアは通行証を放り投げた。反射的にそれを受け取ってから、1つ疑問が浮かんだ。
セレイス「これ、どうしたの?」
タア「…んなこと気にしてんじゃねぇ。オレはもう使わねぇし…やるよ」
セレイス「ありがとう。でも、僕はもう城には入れないよ。顔と名前を覚えられちゃったからね」
セレイスは苦笑しながら、タアに通行証を返した。タアは仕方なしにそれを受け取った。
セレイス「それで…何をしてたんだい?」
タア「兵士の奴らが愚痴ってんのを盗み聞きしてきただけだ」
まさか、セレイスだけ城に入ったのが納得いかなかったから自分も入った、などとはタアの性格上死んでも言えない。
タア「聞いた話をまとめたら、知らねぇ奴がいきなり大臣になるってどういうことだ、だとよ」
セレイス「!!!」
セレイスは一瞬耳を疑った。タアは自分より遥かに有力な情報を掴んで戻ってきているではないか。
タア「オレには何のことか分からねぇから、あんたに教えてやるよ。どうせオレが知ったとこでどうする話でもねぇからな」
セレイス「タア…お手柄だよ!これで大体のことが掴めた…!」
セレイスはすぐに、常に携帯している手帳にそのことを書き込んだ。それを見て、タアが(まめな奴だな…)と思ったのは、さすがにセレイスも気付かなかったが。