Chapter 21-3
トゥーダ「グワァァァッ!!」
トゥーダの悲鳴が響くと同時に、アルムは体の自由が利くことに気が付いた。そうして、ひとまず距離をとろうと後ろに1歩退く。アルムはそこで初めて、トゥーダを斬った人影をはっきりと見た。
???「ヒーローは 少し遅れて 現れる。by俺…なーんてな!」
アルム「…アランさん!!」
トゥーダを斬りつけ、アルムを危機から救ったのはなんとアランだった。
アラン「よぉ。たまたま通りかかったら、でけぇ竜巻が見えたからな。ちょっと失礼して屋根に登らせてもらったら、お前がピンチだったもんでな」
アルム「アランさん…助かりました、ありがとうございます」
アラン「気にすんなって。俺が助けに入りたかっただけだからな…さてと、こいつらを片付けるか!」
アランは剣を2度3度振り回し、ぴたりと剣先をファッグに向けて止めた。
ファッグ「くっ…よくもトゥーダを!お前も一緒に死ね!!」
ファッグの巨大な拳が、アランに向かって飛んで来る。が、アランはそれを避けるのではなく、右腕一本で受け止めてしまった。
ファッグ「バ…バカな!?」
アラン「…おいおい、こんなパンチじゃ蝿も殺せないぜ?」
ファッグ「ふざけるな…ぬおぉぉっ!!」
ファッグが徐々に力を上げていく。それに比例して、アランも受け止める右腕に力を込めていく。ぶつかった手は押しも引きもしなかったが、やがて互いに腕を引いた。
ファッグ「人間の癖にそのパワー…お前は何者だ?」
アラン「お前、自分で答え言ったじゃねーか。人間だよ、人間」
ファッグ「くっ…お前のような奴がいたとは…!」
じりっと1歩下がるファッグ。その横には、まだ先ほどのアランの剣撃のダメージを拭い切れていないトゥーダがいる。アランは2匹に再度剣を向けて、こう言った。
アラン「ここは退け。さもないと、お前らを殺すことになるぞ…俺は街中で、あんまり派手にやり合いたくはない」
アランは鋭い目つきで、2匹をしっかりと見据えている。しばらく沈黙が続いたが、やがて2匹は後退りをし始めた。
ファッグ「…お前の言う通り、ここは退いてやる…しかし、次は必ずお前を殺す!」
トゥーダ「…オレたちをここで殺さなかったこと、せいぜい後悔するんだな!」
トゥーダが2匹の周りに小さな竜巻を巻き起こした。それが消えた時、その姿はどこにも無かった。