Chapter 21-2
アルム(どうしよう…さすがにちょっとピンチかも…)
アルムは街の人々のように逃げ惑ったりはしなかったが、わずかに焦りを感じていた。体躯の大きい、手強いであろう魔物が2匹である。勝算はない。
トゥーダ「ケケケ、無駄な抵抗はやめろ!お前らはここで死ぬんだよ!」
ファッグ「大人しく俺たちに殺されることだなぁっ!!」
そんなことを言われたって、動きを止める人は1人もいない。むしろ余計にパニックに陥り、叫び声がますます大きく耳に入ってくる。しかし、たった1人動かずにいたのが吉か凶か、とうとう2匹がアルムに気付いた。
ファッグ「おい、トゥーダ…あそこに動かないガキがいるぞ…」
トゥーダ「本当だな…まずはあいつから殺るか…」
気付かれたか、しかしこれで敵の注意はしばらく自分に向く、アルムはそう考えた。
しかし、ここから先どうする?見たところ戦えるのは自分1人だ。しかも派手に動けば民間人を巻き込む。当然向こうはお構い無しに動くだろうが、そうなれば大惨事は避けられない。おまけに数でも力でも分は向こうにある。圧倒的に自分に不利な状況だった。
ファッグ「グハハハ、死ねぇっ!」
アルム「うわっ!」
ファッグのパンチを、アルムは寸前で避ける。勢い余った拳が、地面を砕く。その光景を見て、人々がさらに恐怖におののく。
ファッグ「ちっ、避けやがったか。だが次は外さん!」
再び殴りかかってくるファッグ。今度はアルムも準備は出来ていた。拳の軌道をしっかり見て、上体をひねった…つもりだった。しかし、アルムの体は元の位置に戻っていた。その原因はすぐに知れた。トゥーダが、風でアルムの動きを押し戻したのである。
ドンッ!!
アルム「うわぁっ!!」
防御の姿勢をとることもかなわず、アルムは大きく後方に吹っ飛ばされた。そのすぐ後ろには、竜巻の壁。危ない所だった。
ファッグ「グハハ…次で終わりだ。あばよぉっ!!」
三度拳を振り上げるファッグ。だが今度は、その段階でアルムは剣を抜き、ファッグに先に斬りつけた。タイミングを見計らっていたトゥーダを出し抜き、動きの速さでファッグに勝ったアルムの剣は、ファッグに小さな傷を与えた。そして素早く、竜巻から離れた広場の中央付近に戻るアルム。
ファッグ「よくも傷をつけてくれたな…」
トゥーダ「これはなぶり殺すこと決定だな…ケケケ…!」
逆上するかと思えば、結構冷静な2匹。しかしアルムの方はますますピンチを迎えた。トゥーダがこの段階から、アルムの動きを風で抑えつけてきたのだ。全くと言っていいほど、身動きが取れないアルム。ファッグからの一撃はもはや避けられないかに思われた。
だが、その時だった。
???「そこまでだぜ!!」
突如、頭上の方から声が聞こえてきたかと思うと、剣を振りかぶった人影が、自分たちの方に落下してきた。何が何かも分からぬまま、アルムは思わず目を閉じた。