Chapter 20-15
―――半年ほど前に、前大臣が病死して、ラダトーム国家は新たな大臣を迎えたらしい。しかし今から十数日前に、国王までもが病に倒れ、現在も療養中らしい。その間は新たな大臣が実務を取り仕切っているが、国王がこの状態で城を開いていては危険があるということで、国王の体調が回復するまで通行証を発行し、入城を規制した、ということらしかった。
セレイス「なるほど…まあ、大臣としては妥当な判断だろうね…」
セイファー「はい、ちなみにこの通行証なんですけど、これを持っている人しか入城を許可されないみたいです。ボク、頑張って城中を探してみたんですけど、1枚しか見つからなくて…」
アルム「あれ?セイファーはどうやってお城に入ったの?」
セイファー「それは…こうだよ」
言うなり、セイファーは地面に降り立って姿を消した。そういえばそうだった、という感じで「あぁ…」と納得するアルム。
セレイス「1枚あれば十分だよ。ありがとう、セイファー」
セイファー「いえいえ。それじゃあボクは他にもやることがあるので、これで」
セレイス「うん、またね」
セイファーは空高く舞い上がって、遠くへ飛んでいった。
ルーナ「もう行っちゃった…」
ルージャ「もっと一緒におしゃべりしたかったな…」
2人は少し残念そうな表情で、セイファーを見送った。
タア「…で?」
今までずっと話に加わっていなかったタアが、やっと口を開いた。
タア「それが1枚しかなけりゃ、オレら4人は何してりゃいいんだよ」
そう。ラダトーム城に入れるのは、通行証を持っている者だけ。つまりセレイスが城に入るとしても、後の4人は入ることが出来ないのだ。
セレイス「君たちは、しっかり体を休めるのが仕事だよ。思ったよりもみんな疲れてるよね。もう夕方近いし、今日はラダトームで1泊することにするよ。だから、みんなに言っておく。今日は宿でゆっくり体を休めること、いいね?」
セレイスの有無を言わさぬ口調に、さすがのタアも「ああ」と同意した。
セレイス「リムルダールからは馬車が出てるらしいから、あと少しの辛抱だよ。もうすぐそこだから、頑張ろう」
アルム「はい!」
ルーナ「よーし、がんばるぞー!」
少し休んだからか、彼らの体力も少しは回復しているだろう。セレイスはそう判断し、すぐにリムルダールまで行くことを決め、やや急ぎ足気味に祠を後にした。