Chapter 20-5
セリス「…俺らが一番最後だったのか」
レイシア「みんな、最後だから張り切ってるのよ、きっと」
庭に出れば、既に他の生徒は集まっていた。そしてアーロンもいる。セレイスも、メリーも…しかし、ゼクトルとシェルトの姿がない。そう不審に思っていたら、アーロンの声が響いた。
アーロン「みんな、聞いてくれ。いよいよ最後の行事である最終実習を行う日が来た。今日まで1年間、よく訓練についてきてくれたと思う。感謝する、ありがとう」
アーロンが短く頭を下げる。生徒全員が、それに面食らっていた。自分たちへアーロンの口から感謝の言葉が飛び出すなど、アルムたちには考えられなかったのだ。
アーロン「ちなみに、ゼクトル先生とシェルト先生は別件で動いている。この実習の間は私たち3人が、お前たち12人を3つのグループに分けて、各々1人ずつ付いて監督する。ここまで言っても実習の内容に気がつかない者がほとんどだろうが…」
一同は皆黙っている。その妙な沈黙が、わずかの間辺りに漂う。おもむろに、アーロンではなくセレイスが口を開いた。
セレイス「君たちは、2つの道を選べる。1つはこれから順に寄る町、故郷に帰り、みんなと別れを告げるっていうごく普通の道。もう1つは―――」
メリー「私たちといっしょに、ある目的を果たすまで旅をする、っていうこの上なく危険な道なの」
一同「!!!」
全員がますます緊張した表情になる。
アーロン「どちらを選択するかは自由だ。つまり、この最終実習は実習であって実習ではない。試験を終えた段階で、課程は修了していたというわけだ。それでは、10分ほど時間を取ろう。命の保証はない、よく考えろ」
重みのあるアーロンの言葉が、アルムの胸に響く。確かに1年振りに、両親に顔を見せてやりたいのは山々だ。しかし、それは自分にとって最善の選択であれど、最高の選択ではなかった。
アルム(ぼくは…絶対に生きる。生きて、ベラヌールに帰ってみせる…!)
心の中で、アルムは強く思った。セリス、ルーナ、レイシアも、アルムとほとんど同じことを考えているように見えた。
与えられた10分の時間は、もう過ぎようとしていた。