Chapter 19-13
さて、こちらはアルムたち。

アルム「はぁ、はぁ…大変だったね…!」
セリス「…ほんとだぜ、はぁ、はぁ…!」

2人は洞窟の入り口で、息が乱れたままで愚痴っていた。というのも、途中でいよいよ雨が強くなり、まともに戦える状態ではなくなったからだ。道程も半ばを越えた所で引き返すわけにもいかなかったので、この勇者の泉を目指し、降りしきる雨の中を全力で走ってきたわけである。

アルム「はぁ…とにかく、無事でよかったよ…」
セリス「ああ、そうだな…雨宿りがてら、奥の方まで行ってみようぜ…」

まだ完全に息が調ったわけではなかったが、2人は洞窟の深部を目指して歩き始めた。内部はぼんやりと明るく、心なしか洞窟全体から聖気を感じる。

普通とは違う洞窟を、さらに奥へ奥へと進んでいく。そして最深部にたどり着いた2人は、そこであるものを目にした。

アルム「…あれっ?あんな所に人が…」
セリス「おいおい、あんな先っちょに立ってたら落ちちまうぜ…」

それは確かに人影であった。もっとよく見ようと、その人影に近づいていき、ある場所でついにそれが誰なのかをアルムが見抜いた。

アルム「…ロエン!!」

大声でそう呼びかけると、人影はわずかにビクッと震えたようだった。

セリス「こんな所にいたのか!無事で良かったぜ、さあ一緒に―――」
ロエン「だめだ!!」

こちらに背を向けたまま、ロエンはセリスの言葉に力強く首を振った。その大声に、ゆっくりロエンに近づいていた2人の足はぴたりと止まった。

ロエン「僕は…君たちとは一緒に行けない…!」
アルム「なんで!誰もロエンのことを悪く言ってなんか―――」
ロエン「そうじゃないんだ!!」

またロエンが叫ぶ。ここまで取り乱したロエンを、2人は初めて見た。

ロエン「…小さい妹が…悪い奴らに誘拐されたんだ」
セリス「なんだって!?でもそうだったらなおさらじゃねーか、俺たちが一緒に行ってお前の妹ちゃんを助けてやるよ!」
ロエン「それは出来ない、あいつらは仲間に助けを求めたら妹を殺すって言ってる!」

2人はその言葉に口を閉ざした。彼は―――ロエンはずっと1人で、敵と戦っていたと言うのか。そして、これからも。

ロエン「みんなには伝えておいて、僕は無事だから…心配しないでって…!」
アルム「…けど、それじゃあロエンは!」
ロエン「僕じゃないんだ!妹を助けてやらないとだめなんだ!」
アルム「…っ!ロエンっ!!」

叫んで、ロエンはさっとアルムたちの脇をすり抜けるように走って行った。慌ててその後を追いかける2人。下りてきた階段を上り、袋小路の多い洞窟内を疾走する。しかし、ロエンの方が速いようで、洞窟を出た頃に彼を完全に見失ってしまった。

セリス「…ロエン…!」
アルム「どこに…行っちゃったの…!」

降り続く雨の中で2人はしばらく、何をするでもなくただ突っ立っているばかりだった―――。


〜続く〜
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