Chapter 19-9
ゼクトル「俺は、お前らに頭を使って欲しかったんだ」
ゼクトルは自身の頭を指差し、言葉を続けた。
ゼクトル「この質問に対して、よく悩んで、考えて欲しかった。剣を…いや、剣だけじゃねえ、武器を持って外で戦うってのは、お前らが思ってる以上に大変なことでな、ただ強けりゃ、敵を倒せりゃそれでいいわけじゃねえんだ。自分の考えをしっかり持ってなきゃ、周りに流されて大きく道を踏み外したりして、取り返しのつかないことになっちまう」
アルム「…そうなんですか?」
ゼクトル「ああ、俺はそういうのを知ってる。だから、常に自分の考えを持って、考えながら動いて欲しいんだよ。これが言いたかったから、お前らにはこういう試験を出した。もう終わりだ、外で剣でも振ってこい」
そう言ったゼクトルは、一仕事終えた、とでも言うような顔をしていた。アルムはありがとうございました、と1つお辞儀をして、部屋を出て行った。
ゼクトル「…アルム、お前は道を間違えんなよ。俺みたいにな…」
そう小さく呟いたゼクトルは、窓の外にちらりと目を向けた。
◇◇◇
セリス「おっすアルム!試験どうだったよ?」
アルム「えーと…まあまあかな?セリスたちは…何したの?」
レイシア「メリー先生と1対1よ。って言っても、先生はすごい手加減してくれてたみたいだけどね」
1日に2回の実戦とは、彼らも大変だな、とアルムは思った。
レイシア「それにしても、メリー先生のあの動き!やっぱり私もまだまだだわ、もっともっと頑張らなくちゃ!」
セリス「ああ、俺も頑張って回し蹴りの1つや2つ覚えねーとな…!」
ルーナ「えっ、回し蹴りって2つも3つもあるの!?」
レイシア「…ルーナ、そう言うことじゃなくて…」
そんな和やかな夕食の席の中で、アルムは1人、「剣を握る上で、自分の考えを持つ時と持たない時とではどう変わるのか」ということを考えていた。