Chapter 19-8
コンコン、とドアをノックする。「おー、入っていいぜ」というゼクトルの声を聞いて、アルムは緊張気味にドアを押し開いた。

ゼクトル「またお前は硬えなおい、タアなんかノックもせず入って来たってのに…」
アルム「えっ、でも、ノックしないと失礼だと…」
ゼクトル「ああ、お前が正しいさ。まあとりあえずこっち座れよ」

ゼクトルに促されて、アルムは椅子に腰掛けた。目の前にいるゼクトルと2人だけというこの環境では、やはり多少なりとも緊張してしまう。アルムの表情はまだ硬かった。

ゼクトル「…あの質問の前に、もういっこ聞くぜ。何でお前を最後に呼んだか分かるか?」
アルム「えっ…いや、分からない…です」
ゼクトル「お前は一番迷ってた。俺みたいに、何のためらいもなく剣を振ることは無かった。俺が見る限りだけどな」
アルム「それは…」
ゼクトル「だから、お前に考える時間をちょっとでもやろうと思ったんだ。どうだ、理由は分かったか?」

ゼクトルの核心を突く質問に、アルムは「…はい」と答えて、ためらいがちに話し始めた。

アルム「…本当は、理由なんて、ないんじゃないかって…思うんです」
ゼクトル「理由はない?なんでだ?」
アルム「…考えてみたんです。確かに強くなりたいとは思ってます。でも、それは剣をやる理由にはなってないな、って」
ゼクトル「………」
アルム「最初はお父さんやお母さんにやれって言われて始めたんですけど、それも理由じゃないような、って」
ゼクトル「………」
アルム「だから、考えてみたんですけど、答えは出ませんでした。ただ、もし理由をつけるとしたら、その…「剣を握ってる理由を探すため」、だと思います」

アルムはそこで息をついた。話している間ずっと、ゼクトルは黙ってそれを聞いていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

ゼクトル「…なるほどな。一番深い理由だぜ。俺なんか、そんな理由は考えつかねえよ」
アルム「………?」
ゼクトル「本当はな、剣をやる理由に正解も間違いもねえんだ。だから別に「強くなりたいから」が理由だっていいんだ。実際、俺がそうだった。けど、なんで「強くなりたいから」って理由を禁止したと思う?」

ゼクトルの哲学的な問いに、アルムは全く答えが思い浮かばずに首を横に振った。するとゼクトルは1つ大きく息をして、こう言った。
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