Chapter 19-7
アルム(ぼくが剣を習う理由…)
アルムはゼクトルからの質問を頭の中で反芻した。とっさに言われると、答えらしい答えは出てこない。アルムが剣を握っている理由は、ただ1人の人物に絞られるのだから。
アルムも最初は、キースに影響された両親が彼に剣を持たせた所から始まっている。だから、今では剣を持っているのが当たり前のように思えて、いざ理由を言えと言われると、少し困る部分があった。純粋なアルムには、嘘をでっち上げるという思考も存在しない。
アルム(ぼくは…)
一生懸命考えても、答えは出てこない。その間に、アリュードが戻ってきて、ユリスが呼ばれていった。
アルム「アリュードは…何て言ったの?」
答えの糸口すら見つからないアルムは、アリュードに助けを求めた。しかし、アリュードは首を横に振った。
アリュード「だめだよ。僕の答えがそのまま君の答えにはならないし、ゼクトル先生も、他のやつらに言うなって言ってた」
アルム「そう…ありがとう」
アルムはまた考える。ではなぜ剣を持つのを必然と思っている?それは親にそう教えられてきたから。ではなぜ親はそう教えた?それはキースという人物に親が…。
違う違う、とアルムは首を振った。これではどんどん思考のスパイラルにはまるばかりだ。
ならば何だろうか?上達するのが楽しいから?いや、それは結局「強くなりたい」と何ら変わりはない。ユリスが戻ってきて、リズが呼ばれていく。アルムはちらっとユリスの方を見たが、彼女に聞いても、アリュードと同じことを言うだろう。
アルム(…考えたらダメなのかな?でも考えなきゃ答えは出ないしなぁ…)
アルムはもう一度質問の原点に返ってみることにした。質問は「なぜ剣を持っているか」だったはずだ。
確かに考えてみると、「強くなりたい」は剣を持つ理由には当てはまらない。それは剣を握った後に生まれる、後付けの理由なのだ。―――ならば、親に持たされたから、でやっぱり正解なのか?しかしどうもそれでは違和感がある。リズとタアが入れ替わる。もう時間はない。
もう一度だけ、違う視点から考えてみる。この質問をすることによって、ゼクトルは何が聞きたいんだろうか、アルムはそう考える。そしてついに、アルムは答えと呼べるものを見つけた。
アルム「そっか…そうかもしれない…」
ゆっくり繰り返すアルム。その時、タアが戻ってきた。
タア「会議部屋。何でラストがお前なのか分かんねぇけどな」
タアにそう言われて、アルムは苦労して見つけた1つの答えを持って、会議部屋へと向かった。